宇佐美毅『テレビドラマを学問する』

中央大学出版部・880円という本なんだけど、実は2012年8月の出版。
著者から贈られたものの、まったく興味が無い分野だったので、本を開く気も起らず放っておくしかなかったもの。
テレビドラマはほとんど見ないとは公言してきたけど(大河の歴史ものは稀に見ることあり)、関心が無いのだから仕方がない。
むしろ宇佐美氏に限らず文学研究者が何故あんなものを惹かれるのか、不思議なくらいだった。
漫画も同然だったのだけれど、千田洋幸氏や山田夏樹クンの漫画論を読んだらモノスゴク面白かったので考え方が変わったのは確か。
しかしドラマは論じられている対象を見てないので、ナウシカやアトム等の漫画論のようには論の面白さが分からないと思う。
宇佐美氏の本は信頼するハカセ(近藤裕子さん)が評価していたので読んでみようかと思ったこともあったけれど、そのままとなった。

実はまだ読んでないのだけれど、先日深夜のテレビ番組で偶然「ドラマを学問する」というのがあり、いきなり宇佐美氏が出てきたので驚いた。
氏は大学院の後輩で、安藤宏氏と同学年の俊才として認知していたけれど、以前贈られた『小説表現としての近代』(おうふう、2004年)は拾い読みしかできなかったので、退職してヒマになったから勉強させてもらおうとは本気で考えていた。
その先には山田有策氏と猪狩友一氏との共編である『硯友社文学集』(岩波書店)が待ち構えている、という次第(学問に前向きなイチロー君)。
ところがいきなりテレビに現れて「ドラマを学問する」といって、様々な放映中のドラマを批評して行くのだから面食らってしまった。
よくそんなヒマがあるナ〜と思うくらいドラマを見ているのだけでも驚くのに、それを本気で論じているのだから驚きも2倍3倍だ。
ドラマを見ていない者には、論じるというよりコメントするという程度に聞こえてしまったので、そんなことなら何も宇佐美毅でなくてもできるだろうと思わせてしまった。
振り返ってみれば、宇佐美氏が村上春樹を論じ始めたと知ってビックリ残念がったことを思い出したけれど、ハードルの高い明治初期文学研究を支えていた氏が、何故誰でも論じられるハルキなどに臨んだのか理解できなかったものだ。
番組では大学でドラマを講義する宇佐美氏が映されていたが、ボクも大学の方針に付き合って数年間コマーシャルの言葉をめぐる講義を持たされたけれど、宇佐美氏の変貌も大学の要求に応じたものなのだろうか?
不可解なままだけれど、この本はハカセのみならず分かる人にはとっても面白いに違いない、ということで遅ればせながらおススメ!