【結石事情】地獄から天国へ  村上春樹「スプートニクの恋人」  ジャコメッティの矢内原伊作像(絵画)  小林秀雄  

 昨日地獄から天国が一転した日で、長い一日だったナ。結石のレントゲン撮影のために絶食を強いられていたので、起き上がると空腹を覚えるのを避けてできるだけ蒲団に横たわっていたヨ。頻尿で長時間眠れないので、常時寝不足状態だから寝続けるのは簡単。放送大学などの録画を観ていてもすぐに寝入ってしまうのだネ。お蔭で昼近くに起きて病院に行き、痛みもないから2時の診察が済めばすぐに解放されてビールを呑めると思い込んでいたら、クリマン先生から非情にも2度目の粉砕施術を命じられ、帰れたのは4時過ぎていたかな。

 痛みがあった時は寿司のようなサッパリ嗜好だったけれど、痛みがなくなり元気になったせいか、久しぶりにビフテキで赤ワインを飲みたくなったネ。西国立から乗り換えの立川駅で降りて、手っ取り早くグランデュオ立川のレストラン街に行ってみたら、あいにくビフテキを食わせる店がなかった(専門店に行っても準備中の時間帯だろうけど)。牛タンや中華など美味そうな店はあったけど、もっと油っぽい肉が食べたくて正月にジューシー手製のローストビーフを思い出し、カケルという店(ファミレスよりワンランク上のイメージ)でローストビーフとハンバーグの盛り合わせにチーズかけ生野菜を注文したヨ。生ビールもプレミアムモルツらしく実に美味、食事の方も満足できるレベルだったので痛みから解放された喜びに十分値したものだった。

 自宅なら録画した美術番組などを見ながら飲食するのだけれど、代わりに持参したハルキの「スプートニクの恋人」を読みながら飲み食いしたヨ。初読のまま放置してあったものを、ツクホーシの論文原稿を読むために取り出してきたもの。ハルキの小説を読みながらビールやワインを飲む情景自体が、まるでハルキの小説みたいだと苦笑しながら楽しんだネ。1時間半は飲んでいたから、小説の方はだいぶ進んだヨ。その割には料金が予想の半額くらいで済んだのは、やはりファミレスのワンランク上の店のようだ。

 

 9時からいつものように「ぶらぶら美術館」を観たら、旧ブリジストン美術館改めアーティゾン美術館のオープン展示を取り上げていた。美術館としては小規模ながら、漱石も評価していた青木繁の「海の幸」その他数点を始め、著名かつ優れた画家の作品を展示しているのでおススメだネ。番組では紹介されなかったけど、ピカソらしい絵の隣りに先般取り上げた関根正二の「少年」らしい作品も見えた気がしたネ。ボクの大好きなルオーも1点、チラッと写った気もしたから、充実した美術館だと改めて感じたネ。と、振り返れば、最初にこの美術館に行ったのは学部生の頃だったような気がするネ。ともあれ名門の美術館が、改装を機に中国人の◎◎(名前を忘れた)など新しい作品も購入して並べてあり、中でもジャコメッティが四苦八苦して描いた矢内原伊作像もあったのは驚き。戦後間もない頃に、この若き日本人哲学者像を何年もかけて描こうとした謎の絵なンだけど、山田五郎さんの補足によれば最近この謎を解いた本が出たばかりとのこと。それによれば、どこにでもある三角関係なのだそうでガッカリ。矢内原とジャコメッティ夫人とがデキていて、それをジャコメッティも知った上で帰国後の矢内原をくり返しパリに呼んだそうで、長年の謎も解かれてしまうとツマラナイものだネ。

 矢内原伊作実存主義の研究者だったと思うけど、個人的には昔からダメな人だと思っていたネ。というのは戦前はご多分に洩れず小林秀雄を読んでいたそうながら、戦後はその小林を捨てたのを自慢げに書いていたからだネ。矢内原に限らず多くの進歩的知識人が、小林秀雄を見捨ててマルクス主義実存主義に走った時代である。そんな時に福田恒存が「皆が小林秀雄を捨てるなら、私は喜んで拾う」と宣言したのだから大したものだ。まだ無名の少年だった吉本隆明も、小林を捨てなかった1人だったと思う。

 (長くなり過ぎたので、続きは改めて)