【読む】伊藤一郎『龍之介の芭蕉・龍之介の子規』

 同じ「一郎」ということもあって親しんでいる伊藤さんが、長年積み重ねてきた研究の成果をまとめて翰林書房から出版したので紹介したい。渡邊正彦さんや栗原敦さん(近世文学者も数えれば嶋中道則さん)のように、東京教育大学出身の研究者は文字通りのインテリ揃いなのだけど、伊藤さんも大学者・尾形仂さんの薫陶で近世と近代の文学双方を見渡せる目を具えて作業を進めるので、実証に基づいた研究らしい研究をする人。表題のとおり、芭蕉と子規と龍之介とのつながりに1章ずつ割き、後は久米正雄に1章と龍之介の「六朝書体」に1章。この「六朝書体」が口絵写真に載せられていて、実に楽しい。こんなこともできるのが伊藤さんの強みで、数多いる他の龍之介研究者には期待できない点だろネ。

 ボクは昔から龍之介自体には関心がないのだけれど、芭蕉や子規との関連と言われるとむしろ興味を覚えるのだナ、久米には全然興味ないけど。とはいえこのところ次々とボクの専門分野(?)の昭和文学の書をゲットできて集中して読んでいるところなので、残念ながら伊藤さんのお手並みを楽しめるのは先のことになりそう。皆さんはお先にどうぞ! 面白いヨ。