【読む】疋田雅昭『トランス・モダン・リテラチャー』のおススメ(2)

 前回「序」からも引用して本書の意図などを紹介したけれど、思えばだいぶ前に序文の初稿(?)を読ませてもらったことがあったのだ。その時はいきなり現代文学の問題点などを列記していたような印象で、もっと読者の立場を考えて書かなきゃ伝わらないヨ、と率直な感想を述べたのだけど、本書の「序」はよくまとまっている感じだネ。印象があまりに違うので初稿と比べてみようと探したけど、未発見。先日自家のどこかで見たばかりだったと思ったけど、探し物は見つからないのが常だから仕方ない。探さなければ、そのうち出てくるだろう。

 イチロー語録、「探し物とオンナは、探しても出てこない」。

 後でお約束の目次を紹介するけど、初稿の時は目次を知らなかったので、本の概略がつかめないまま序文を読んでも伝わってこなかったのかな。それともヒッキ―先生がかなり手を加えて分かりやすくしたのかも。学大博士のマギー(大國真希)の太宰本(美術論的なのと音楽論的なのと2冊ある)の時も同じ経験をしたネ。初稿を読んだら自己本位過ぎてよく伝わって来なかったので、「最初から書き直し」を指示した(指導する立場だったから)のだけど、あとで出来上がったものを読むと分かりやすくはなっていた。2人とも他人(ボク)の目でチェックされたために意味が通じやすくなったのだとしたら、本や論文に限らず何でも公表する前に一度他者の目を通すことが肝心だネ。自分だけの思い込みのところが、他者を意識することで伝わりやすくなるからネ。

 ともあれ目次を紹介しないと、本書の内容が分からないよネ。

笙野頼子の「二百回忌」他2作。

多和田葉子犬婿入り」他1作。

小山田浩子「工場」他1作。

青山七恵「ひとり日和」他1作。

中上健次「十九歳の地図」

藤原智美「運転士」

長島有「猛スピードで母は」

絲山秋子沖で待つ

楊逸「ワンちゃん」

松浦寿輝「花腐し」

 全15章という充実ぶりだけど、初耳の作家名が2人いる上に他に読んだことない作家が4人もいるのは恥かな? それでも未読ながら本を持っている作品もいくつかあるから、大目に見てもらいたいネ。まずは作品を読んでからヒッキ―先生の論で、現代小説の読み方を楽しもうと思う。(けど、「神曲」や「戦争と平和」をはじめ歴史に残る名作を少しずつ読んでいる最中でもあるので、なかなか現代モノへは行けないネ。ゼミの作品なら否応なく読むけど。滝口悠生は面白いネ。)