【読む】下山孃子『近代文学に見る〈霊性〉』(鼎書房)

 大東文化大学へ非常勤として長いこと通ったけど、その頃にお世話になった下山嬢子さんの定年記念刊行書を贈っていただいた。表題の〈霊性〉は多義的であり、各作家によってそれぞれであるがその作家の数がスゴイ。藤村だけかと思っていたけれど、それ以外に漱石・一葉・秋声・直哉・周作・健三郎・円地文子・大原富江などが全9章にわたって展開されているから大きくて重い書物となっている。価格が税抜きで5500円だから決して安い買い物ではない。しかし買い物の価格は内容との関連で計らなければ価値は決められない。どの論文も目に入りにくい雑誌などへ発表されたものだから、その意味では貴重な書であることに違いはない。本の価値を決めるのは、読んだ人の特権だ。