【読む】森毅の本は知的に面白い!  『エエカゲンが面白い』  浅田彰  三浦雅士『身体の零度』

 朝日新聞の夕刊は、毎水曜日に「時代の栞(しおり)」という欄で過去の名著を紹介している。けっこう有意義な書を取りあげることが多いのでおススメの欄だネ。

 昨日は懐かしい森毅の「エエカゲンが面白い」(ちくま文庫)だったので、改めて森毅に注目してもらいたいと思ったネ。東大卒で京大の数学教授を定年まで勤めたので、学生時代の浅田彰が森さんにナツイていたと公言していたものだ。森さんに言わせれば、浅田が森夫人に取り入って森家に出入りしていただけだと語っていたと記憶する。この辺の事情は新聞記事にはいっさい触れていないけど、安野光雄と親交が深かったというのは初耳だったネ、そういえば2人はよく似てるヨ。

 ともあれ本の表題どおりの内容であり(初刊時の題は「数学のある風景」だったという)、安野さん同様に飄々(ひょうひょう)とした感じで硬直化した考え方を批判し続けるので笑いが止まらない。学生の頃からファンだったという山本貴光さんというゲーム作家に言わせれば、本書は「遊びのすすめ」であってこぢんまりとした日本人の発想を撃ち、「目的合理性や成果主義から離れ、試行錯誤した方がいい」から失敗から学べ、ということになるという。

 他にもたくさん文庫など入手しやすく楽しい本があるので(古書店やアマゾンに)、まずは1冊読んでみることだネ(できれば「エエカゲンが面白い」がいいかも)。そうすれば次々と読みたくなるだろう。ボクも持っていた数冊を、関心があると言ったアマッチに全部上げたヨ。

 

 朝日の同じページには「編集者をつくった本」という連載もあり、この日は小柳学という編集者が三浦雅士の『身体の零度』を取りあげている。

 《三浦さんは二つの雑誌の編集長をしていた。夥(おびただ)しい本を読み、位置づけ、時々の関心を形にしていく、編集者としての立居振る舞いに刺激を受けていた。》

 こういう三浦の姿を読むと、上記の浅田彰がある座談会で三浦を上から目線で「あなたは編集者であって、批評家ではない」と断言していたのを思い出す。いかにもニューアカ(デミズム)の旗手・浅田彰らしい頭ごなしの批判で感心したものだヨ。生まれながらの批評家・柄谷行人が、当時あまりに本を読んでないのを小バカにしたような三浦のもの言いにキレた浅田が、根底から三浦を否定し尽くした感じで爽快だったネ。

 《知識を集積したところで、批評家にはなれない!》ということ、浅田彰から学ぶべしだネ。