「100分で名著」が文芸モノをやるのは久しぶりかな。このところハイデッガーだのアリストテレスとかの日常的な発想に近い部分の解説の印象だったけど(よく見なかったけど)、やっと見たくなるものを取りあげてくれた。安部公房は読者としては好きな作家ながら、研究対象としては全く意識したことは無かったネ。先般『昭和文学研究』第84集掲載のナッキーの「プルートのわな」論を紹介したけど、そこで記したように公房は打率はイイものの「プルート~」は下らない作品だと思う。公房には素晴らしい作品がたくさんあるからネ。「砂の女」はそのトップクラスのものだから、未読の人はぜひ読んでもらいたいネ、読まないままだとジンセイのマイナスだネ。映画の好きな人は勅使河原監督で岸田今日子が名演したスゴイのがあるヨ。
今回の解説者は漫画家のヤマザキマリ(古代ローマ人が現代の日本の銭湯に登場するもので名前が出てこないマンガの作者)でテクストの細かい《読み》は期待できないものの、大まかな見地から面白い批評が期待できると思ってみたらその通りだった。ヤマザキは画家でもあるので、美術番組では面白い分析で感心させられることもあったネ。ともあれ見る価値があるからおススメだネ。
「砂の女」はテクスト自体が素晴らしく、文章から味わいがあるのは公房が詩作もやっていた成果だろうけど、読み応えあるネ~。昔の『立教日本文学』で酒井クンがその文体を絶賛していたのを覚えているヨ、砂を描きながら水のイメージにあふれているとネ。公房論者は少なからずいるけど、「砂の女」論としては木村陽子さんのが抜群に面白いネ。学大の卒業生には木村センセイの授業を受けた人もいるだろうけど、彼女の公房論(笠間書店)は売れて研究書にしては2刷りまで出たのだヨ。今や大東文化大学の文学部の先生だヨ。「砂の女」論ではまさかの性病に注目し、独自の切り口から作品論に仕上げている、絶対おススメだヨ。木村さんを聖心女子大院生の頃から論文指導したから褒めているわけではないヨ、テクストの《細部を立ち上げる》というボクの最大目標を果たしている論文だからネ。
月曜夜と(水曜から変更されて)火曜早朝(再放送)の番組だヨ。