【読む】ハルキ論読んでます  宇佐美毅・千田洋幸編著『村上春樹と1980年代』  大井田義章  山田夏樹

 ハルキについての論文チェックを頼まれているので、久しぶりにハルキの作品論などを楽しんでいるヨ。依頼されているのは「風の歌を聴け」なのでシリーズの第1巻である宇佐美毅・千田洋幸編著の『村上春樹と1980年代』(おうふう)を取り出した。本書の宇佐美毅・早川香世・大川武司の3本は以前読んでブログに感想も記したけど、今回は「風の歌を聴け」の研究史を大井田義章さんが書いているのが期待以上に参考になった。学大の近代3ゼミの機関誌『青銅』に毎号掲載してくれる大井田さんの前号に対する批評文は、いつも丁寧に読みこんだ感想・批評なので感心させられていたけれど、ハルキ論もよく読みこなした上でそつなくまとめているのでとても役に立った。

 気付けばナッキー(山田夏樹)が「風の歌を聴け」論を担当していたけど、これも面白かったネ。(ボクが無知な)マンガも含めて何でもハイレベルで論じることができるナッキーながら、先般は安部公房のクソ作品「プルートーの罠」まで論じていたので苦言を呈したけれど、「風~」は優れたものなので論文も刺激的で楽しませてくれた。

 大井田さんも紹介している笠井潔加藤典洋竹田青嗣村上春樹をめぐる冒険』(河出書房新書)が自家の本棚にあったので喜んで読み始めたヨ。期待を超える面白さだけど、ツワモノ3人が集まって論じているのだからとても刺激的だ。30年以上前の本を今ごろ読んでいるのが遅いのだろうけど、ハルキにはなかなかホンキになれないので仕方ないヨ。ハルキについては誰でも何か言えてしまうので、卒論もハルキ論の評価は低めだったネ。何でも書きたがる(出版社が出させたがる?)内田樹の本は未読のままだけど、黒古一夫はじめクズ本もたくさん出てるしネ。