【見る】大河ドラマ  和田義盛の描き方  三谷幸喜のやり口

 三谷幸喜が脚本を書いているということもあって、「鎌倉殿の13人」はけっこう見てるネ。通常の時間帯で見ることはなく、BSプレミアムでいち早く見たり昼間の再放送で見ることが多い。三谷の脚本は遊びが多いとは予想していたけれど、想定以上に資料に基づいているようなので違和感が残ったままという所もある。運慶や慈円(資料の1つである「愚管抄」の作者)が登場して義時とも会話するのも違和感を抱いたけど、時代的にはありうることなのでスルーしてるヨ。最大の資料となっている「吾妻鏡」は一部しか持ってないので、三谷の描き方が「吾妻鏡」に基づいているかどうかは確認できない場合が多い。

 しかし第二代将軍の頼家の殺され方は、「愚管抄」とはまったく異なるので三谷がヤッタものと思われる。三谷が創作した殺し屋が屋敷内で頼家を殺していたけど、「愚管抄」によれば頼家が入浴中に犯人が殺してタマまで切り取ったというのだから、テレビでは再現できなかったのだろネ(三谷ならそのまま描いても良かったのに)。

 

 登場依頼ずっと違和感を抱いているのは、和田義盛の描き方だネ。ボクの義盛のイメージは太宰の「右大臣実朝」に基づいているので爺さんぽいのだけど、テレビではかなり若いので別人の感じだネ。髭はあった方がふさわしいし、まっさらな心で単純な人間像なのはイイのだけれど、討伐に向かった畠山重忠に腕相撲で決着を付けようと申し込むバカさ加減は、三谷のやり過ぎとしか思えない。実朝と連れ立って遊ぶことが多いのもやり過ぎながら、この主従の気持が通じ合っていたように描いているのは、ボクの実朝論(「二つの実朝像――小林秀雄太宰治」、初出『国文学』⇒『小林秀雄への私的試み』)に近いと言えるネ。

 この義盛もやがて北条市にハメられて滅ぼされるのだけど、見ちゃいられないナ。大好きな「右大臣実朝」で実朝がくり返す「平家は明るくてよい」という言葉は、平氏と異なり身内同士で殺し合う源氏の「暗さ」を嘆いているのだけれど、「暗さ」で言えば北条氏の方がはるかに「暗い」よネ。ドラマ中の義時はその「暗さ」は頼朝から受け継いだと自認しているけど、小栗旬がその汚れ役をどこまでキレイに演じるのか、三谷との合作になるネ。