【見る】「100分で名著」  林芙美子「放浪記」  火野葦平  ハン・ガン『少年が来る』

 何も情報流さなくても見ている仲間も多いと思うけど、「100分で名著」はいま林芙美子「放浪記」を取り上げているヨ。柚木麻子(あさこ)という作家が担当しているけど、芙美子同様の見た目はともかく適任の感じだネ。芙美子自身もクセの強い人だけど、それに負けないクセのある人で今まで知らなかったネ。《文学》を度外視して芙美子の人間ばかり語るものと思っていたら、「放浪記」の初出テクストの言葉も掘り起こしてそれを評価しているのでダイジョブだネ。昨日の昼間に第1回の再放送、夜に第2回を見たけど印象を記しているところ。

 ずいぶん前に読書中の小説として「放浪記」と「麦と兵隊」と記したと記憶しているけど、その後は中途で放置したままだった。特に「放浪記」は読み進んでないので、テレビで取り上げられている部分はほとんどが未読の部分だ。林芙美子はずいぶん前から関心があって、演習授業で取り上げた時にその表現力の豊かさを発見して驚いたネ。詩も書いているとおり、斬新な言葉使いが読者の心に響いてくるネ。

 「放浪記」は冒頭から何度も読んで感銘を受けたものの、森光子の舞台で取り上げられているような部分は未読のままだから、またチャレンジしようと思っている。晩年の傑作「浮雲」の達成度の高さとは違う、未完成の奔放な言葉の乱舞を楽しもうと思っているヨ。

 

 最近は「麦と兵隊」を通り越して火野葦平を集中的に読んでいる(安吾を読め! という声も聞こえるけど)。小説は『革命前後』を少しずつ読みながら、池田浩士さんの大著『火野葦平論』をあちこち読んでいるヨ。葦平は小林秀雄がらみで興味を持ったのだけど、昔シュンテン(故・花田俊典)に「葦平は全集が出たら全部読みたいくらいだ」と言ったら喜んでいたのを忘れない。戦争ものよりもそれ以外の小説に興味があって楽しめるヨ。

 

 その他では先日古書店でタイムリーに出会ったハン・ガン『少年が来る』を読み始めたヨ。光州事件を描いているから血生臭いのは仕方ないけど(ハカセはそういう部分は飛ばしたままだとのこと、分かるネ)、語り手を変えている点でも《文学》を感じさせるネ。第1章「幼い鳥」は「君」と呼びかける二人称小説の形になっている点では、冒頭だけ読んで放置してあるビュトール「心変わり」と同類だけど、浮気小説のビュトールよりもハン・ガンの方がずっと惹かれるので読み進んでいるヨ。