【見る】「英雄たちの選択」石川数正の②  司馬遼太郎

 数正に対する興味を抱いたきっかけが司馬遼太郎(の「関ケ原」)だと記したけど、現在朝日新聞では「語る—ー人生の贈りもの」の代りに「司馬遼太郎を読む」という連載を続けていて、毎回著名人(?)が己の司馬体験を語っている。4回目の今日は、意外にも建築家の安藤忠雄が「この国のかたち」について語っている。ボクは学部生時代からの友人のセイ君から、司馬作品を読まされる形でたくさん読んだヨ。純文学しか読まなかったボクに、セイ君が次々と司馬作品を渡して読ませてくれたのだネ。龍馬も関ケ原も面白かったけど、何より長~い「坂の上の雲」を読ませてくれたのはセイ君に感謝だネ。子規についての知識を得たというより、表題どおりの明治という時代が体感できた印象が残っているヨ。前回記したマー君とセイ君とは、入学同期の級友との集まりだけでなく留年して一緒になった内田樹のクラスの同窓会にも毎回共に参加してるヨ。

 石川数正について付しておけば、数正は秀吉の朝鮮出兵の頃に亡くなっているので、関ケ原で西軍が敗れた後に石川家は当然徳川に取りつぶされたものの、子孫は地元の温泉の宿守として徳川に仕えていたようだ(むかし温泉の番組で知ったこと)。徳川でも数正を「裏切り者」として憎んでいたわけでもない証拠かな。この点は「英雄たちの選択」でもスルーされていたネ(もちろん大河ドラマでもネ)。

 

 前回の見出しに「アッツ島玉砕」を出したのは玉砕がらみではなく、最近「英雄たちの選択」を録画したブルーレイから藤田嗣治のこの作品を取り上げたものを見たばかりだったからだ。昔のものなので中野信子さんが若くて、前髪を降ろした顔が魅力的で惚れ直したネ。それはそうと「アッツ島玉砕」は太平洋戦争初の玉砕地で、これを描いた藤田作品は全国に回覧されて多くの国民の目に触れて戦意高揚に利用されたものだ。藤田は長らくフランスでひたすら絵画創作に励んでいたものの、戦争が始まってしまったので帰国したため肩身が狭いので戦争画を一所懸命に描いたのだネ。腕が確かな絵描きがホンキで描いたのだから「アッツ島玉砕」のような力作が生まれたわけだ。

 議論は必然的に「芸術と政治」のテーマとなり、自分が藤田だったら戦争画を描くか拒否するかという問題にしぼられて、高橋源一郎と一ノ瀬俊也(歴史家)が描くという立場を選んだのは説得力があって同感したネ。中野さんが拒否するというのは分かるけど、三浦瑠璃が描くと応えたのは意外ながらまんざらバカじゃないと思ったネ。一番ダメだったのはMCの磯田さんで、「当時の時代状況を考えれば描いちゃダメですヨ」と批判的なスタンスをとったことだネ。時代の中で必死に生きている者に対して、全てが見えている現在の立場から藤田の苦衷の「選択」に非難がましいことを言うのはマチガイだネ。磯田さんともあろう人が、そんなキレイ事で済ますようなまさかのバカ発言で驚いたヨ。もう10年も続いている番組だそうだけど、磯田さんの発言に納得できなかった唯一の例かな。