近代文学演習B(木4)

* 学部2年生のゼミですが、昔から意欲のある上級生(院生も含む)も参加するの
  でレベルが高くなります。その分、ヤル気のある学部生にはとても勉強になるゼ
  ミです。レポーターのレジュメを叩き台にして、皆で議論を闘わせます。1作家
  につき4作品程度をとりあげます。
  まず太宰治『地図ーー初期作品集』(新潮文庫)を取り上げますが、太宰の次は
  安部公房林芙美子などを考えてますが、受講生の希望も聞きます。

【授業予定】
10月29日  太宰治哀蚊」 レポは岩橋・宮川
11月 5日          (休講)
11月12日     「犠牲」 レポは北林・大沼
11月19日     「股をくぐる」 レポは久松・山本
11月26日     「断崖の錯覚」 レポは木村・佐藤(介護体験中の木村君の
                   都合次第)
12月 3日     (休講、ヘルニアのオペのため)
12月10日      「洋之助の気焔」レポは兪・松崎。太宰は終わり。)
12月17日  テキストは『R62の〜・鉛の卵』(新潮文庫)<生協に注文中>
        安部公房「鍵」 レポは岩橋・木村
12月24日      「死んだ娘が歌った」 レポは宮川・山本
 1月 7日      「犬」 レポは畑澤・根本
 1月14日      「耳の価値」 レポは久松・北林
   21日      「鉛の卵」  レポは坂本・佐藤(タテバヤシ)
   28日      「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」 
                   レポは大沼・松崎
 2月 4日  開高 健「玉、砕ける」 レポは木村・兪
   18日(補講)  「掌の中の海」 レポは畑澤・根本

@ 公房の次ぎの2回は開高健をやります。プリントは研究室廊下の棚上の三段引
  き出しの上段にあります。文庫は文春文庫だったと思う。『ロマネコンティ1935』とかいうのと『珠玉』です。

【授業内容】
10/29
さすがに2年生の精鋭二人のレジュメだけあって挑発的で読ませる。議論も沸いて30分以上の延長。教材論の授業を担当してもらっている木村陽子先生(早稲田博士課程6年生)も参加して議論に加わるほどのレベル。婆様の性の抑圧の現れとして読む観点が無かったのは、レポの性の未熟さの現れか?
今後が楽しみな演習です。次回のレポにも期待できます。

11/12
木村先生が「こんなに短い作品で議論になるレジュメを作れるのでしょうか?」と心配していてボクも同感だったのだが、二人とも期待以上に面白い読みを示したのでビックリ! お蔭でレベルの高い議論ができました。ジュネットの本の名は『物語のディスクール』で、語り手の身体性を排除するために、「視点」ではなく「焦点化」という発想を提起しており、今や学会でも広く受け容れられつつあります。

11/19
前回同様に、短い作品ながらレポがそれなりの切り口を見せて話題を提供していたが、指摘を繰り返しておけば、テクストの文体に注目しないと、文学テクストを読む際には大きな欠落になるので要注意!

11/26
難解ながら興味深いテクストをレポ二人が「快刀乱麻」の活躍、とまでは行かなくても、よく頑張ったと思う。語り手が自己を二重化して語る詐術によって、主人公にまつわる「錯覚」を起こさせる物語という面を忘れぬように。

12/10
松崎クンのリードのお蔭か、兪さんも初発表とは思えない健闘で議論ができました。
テクストの細部に対する読みを、レポがキチンと押さえていたので緻密な議論になっていたので、少々驚きでした。

12/17
 木村センセイが「こんな作品で発表できるなんてスゴイですネ」と言ってたけど、いたく同感。選んだモッチマン・木村が10ページものレジュメを作って来たのにはビックリ! アレゴリー読みとしての詰めが甘いので、その点をカヴァーしたレポートに仕上げられればイイものになる。

12/24 (記したつもりだったが消えている?)
 先週に引き続いて、リュウマンが厖大なレジュメを用意して、今年の2年生の底力を見せつけた。山本さんも独自の読みを出し得ていたし、、、

1/7
 またまたスゴ〜イレジュメ、院生なら当然という域を超えて、先月の2年生の発表を超えんとする勢いが感じられた。相棒の根本サンが病欠だったのを補って余りある迫力でした。「女は実体を伴わない存在」とう把握が最後まで通じなかったけど。
 それにしても私の本音を言えば、よくまぁ<こんなテクスト>で皆さん次から次へとタップリと書けるものだなぁ〜〜、と感心するばかりです。木村センセイも同感でしょうが、「負けそう」と言うより「負けました」。この手のテクストは今時のヒトにピッタリで、私(達)の世代には分からないようにできてる、とまで感じてしまいそう。やはり太宰の「畜犬談」の方が遙かにピッタリくるし面白い! 

1/14
 マジメそうな二人がこんな訳の分からない世界に興味を示すのか不明ながら、こんな安部公房のテクストを楽しめるのが不思議。

1/21
 いつもながらの感想。若さはスゴイ、こんな小説を読み解くなんて! 木村センセイも同意?(あと一回のシンボウか、、、)

1/28
 レポが揃って戯曲として読むというのはテクストのせいか。二人とも健闘したお蔭で議論が盛り上がって楽しかった。ボクの世代(木村先生の世代も)じゃ楽しめないテクストを面白がる学生達を見ていて、いつも驚いていた演習でした。

2/4
 レポ二人とも寝る間も惜しんでレジュメ作りに励んでいたのも肯けるほどの難物テクスト。再読してやはり傑作だという感じを深めましたが、今の世代には分かりにくい要素が多いようで、レポの苦しみ方が理解できた気がしました。舞台となった中国の留学生がどう受け取るのか興味深かったですが、ユウチャンが希望のある明るい読み方をしたのはとても意外でした。かつ自説を曲げない強さも将来が期待できます。自分の意見を言えた李さんも良かったですが、「わからな〜い」を連発したキンチャンの将来は危ういものです。垢の玉のように、もろく壊れることでしょう。
 レポのガンバリに拍手!

2/18
 今日の補講で学部の演習も最後ですが、レポが有終の美を飾ってくれました。畑澤・根本の二人とも差異を見せながらそれぞれオモシロイ読みを提起できていて、とても刺激を受けました。畑澤が関連付けた「こころ」のパロディ(宮川)というテクストの可能性を発掘してもらえたので、桐原の高校教科書にこの作品を載せたいなと本気で考えています。誰かまっさらなプリントを持っているヒトがいたら、貸して下さい。
 半年間、中国文学専攻の北林クンが無欠席で頑張っていた姿が印象的でした。こういう意欲のある学生は、専門でも良い結果を出すものです。
 来年度からは意欲の無いモノドモも受け容れなければならなくなるので、今年までのレベルが保てない不安が先立ちます。<女と学生は量より質>という持論を改めて痛感することになりそうでユウウツ、、、この半年(一年)は良かったなぁ!