パーヴォ・ヤルヴィ(N響)

「聴く」コーナーは書きたいことがたくさんありすぎて、いちいち書いているヒマがない。
N響一つとってもノセダの「運命」について書けないままでいたら、今度はヤルヴィが常任になってビックリして喜んでいるうちに、また紹介できないままになりそう。
時の流れはむやみと早いから。
先日の「三好文子を不良オバサンにする会」でオスギに会って久々にクラシック音楽について話せたのを機に、ここで記してヤルヴィへの注目を促したい。
ちなみにオスギは後輩の研究者で、フルーティストという一面を持っているクラシック通。
文学テクストの読みも確かなヤツだけれど、楽譜まで読めるのだから羨ましいかぎり。
そのオスギもヤルヴィのことは知らないというので残念なのだが、彼はN響に興味が無いせいだろう。
ヤルヴィといえばネーメ・ヤルヴィという北欧音楽の指揮者というのが遠い記憶だから、パーヴォ・ヤルヴィが登場した時はネルヴィの子が現れたけれど親父ほど評価される前に消えることだろう、とナメていたものだ。
それがドイツ・カンマ―・ゾリステンとかいう小オケを指揮して、ベートーベンのシンフォニーを演奏しているのを聴いてブッタマゲタ!
ベートーベンのシンフォニーといえば歴史的に素晴らしい演奏が軒を揃えているところに、今さらヤルヴィが分け入る隙などありえないとタカを括っていたのだけれど、これは確かに歴史に残る演奏だ。
速いテンポでダイナミックに流動して奔る音楽の心地よさと言ったらない。
もちろんフルトベングラーに代表されるようなベートーベンらしさとは無縁な現代的なセンスの演奏だから、そのつもりで聴いて欲しい。
9曲とも全部イイけれど、これまであまり名演奏が乏しかった1・2番、特に8番など改めて聴き入ってしまう。
ウソだと思うなら聴いて欲しいものだ、スゴイよ! クラシックには無縁だと言う人にも通じる快感だネ。
ベートーベンだけかと思っていたら、パリ管を振ったストラビンスキー「春の祭典」も意外に聴けたし(ブレーズの金字塔には誰も及ばないけど)、先日のN響マーラー(1番)もとても良かった(この曲は誰が演奏しても悪くはならないようだけど)。
N響の常任としてはデュトワ以来のハイレベルの指揮者だと断言しておきたい。
アシュケナージのヒドさについては以前ブログに記したけれど、ピアニストとしてはともかく指揮者としてはイモそのもので聴いていられなかった(イモといえば日曜美術館の司会をしていた千住明を思いだすけど)。
サヴァリッシュブロムシュテット等々の歴史的名指揮者を常任に迎えていたN響が、なぜあんなクソ指揮者(人間としては立派だけど)を常任にしていたのか恥を知るべきだ。
でも今度のヤルヴィの獲得で見直した、よくも日本に来てくれたものだ、感謝多謝!
皆さん、日曜午後9時からのN響アワーを聴きましょう!(違う番組の時もあるから注意)

順序が逆になった気がするけど、ノセダの「運命」も久々にこの曲を聴ける演奏だったので見直したものだ。
この曲こそフルトベングラーベルリンフィルウィーンフィルもイイけど)の極め付けのお手本を始め、数えきれないほどの名演奏が残っているところへまさかのノセダとN響がスゴイことやってみせた感じ。
若いころにN響と問題を起こした小沢征爾が、世界的名声を得た後で「運命」を振った時のN響もステキな演奏をしたので、小沢はやっぱり一流の指揮者なんだと変に実感したことがある。
それに比べて大した指揮者とは思えなかったノセダが、この曲についてだけは腰が抜けるほど素晴らしい演奏をして見せた。
むやみとテンポが速く、昔のトスカニーニや最近のラトルや上記のヤルヴィ等よりも度を超えて速いので驚くばかり。
全曲演奏時間が30分を切るのじゃないかな、こんなの初めて!
速ければイイわけではないのはもちろんで、ノセダのはきちんと音楽になっていたのでスゴイ。

まだまだいつまでも記していられるほど材料はあるけど、時間の余裕が無いので今回はこれくらいで。
ひとつだけ常任指揮者就任がらみで、都響東京都交響楽団)の常任として帰国した大野和士がまたスゴイ!
4・5ケ国語を自由に操つりながらヨーロッパ中心で活躍していたので、知らない人もいるだろう。
才能としては小沢よりもずっとレベルが高い音楽家だとは昔から評価していたけれど、それが日本で本格的な活動を始めたのだから長生きはするものだ。
先般のN響アワー都響マーラーの7番を振ったのだけれど、最初の音からして引き込まれたネ。
録画してあったジンマン指揮のN響と比べてみるとその差が歴然としたので、すぐにジンマンを消して大野の方を保存しておいた。
上述のとおり、マーラーは1番なら誰でもそこそこ聴ける演奏ができるようだけれど、7番となると9番同様に聴かせるのが難しい曲だと思う。
ヤルヴィもそうだけど、新任の指揮者がいきなりこれ程の指揮振りをしてみせるのだから、今後が楽しみで仕方ない。
言い忘れたけれど、ボクが聴いたのはすべてテレビ放送で生演奏じゃないから、そのつもりで。
幸い音響ではプロ並みのキュートク先生推薦のスピーカーなので十分感動できるのだけれど、生で聴けばそれだけ感動が深く大きくなるのは間違いなし。
ボクがN響を生で聴いたのは独身時代にサヴァリッシュ指揮のベートーベンの7番くらいのもので(彼らしくホドホドに抑えた楽器数なので物足りなかった感じ)、この数十年はカネをかけるなら釣り! という生活。
余裕があるなら音楽も(他に何があるの?)ナマに限るということ!