亀井秀雄の啓蒙書?  文学理論講座

今日、落掌したばかりのちくまプリマー新書『超入門! 現代文学理論講座』を紹介したい。
日本を代表する文学理論家の亀井さんが珍しく啓蒙書を書いたのかと思ったら「監修」とあったが、執筆がお弟子さんの蓼沼正美さんだから信頼できる。
この人、昔、志賀直哉だったかの論文を探していた時に、優れた研究者だとその名を記憶したものだ。
亀井さんが小樽文学館館長だった時の市民講座を聴いて、それを蓼沼さんが分かりやすく書いたという本とのこと。
このところ亀井さんは大著を観光し続けていてそれらも頂戴しているので、個人的にも亀井イヤーにして旧著(学生の頃からほぼ全部購入していた)も含めてジックリ読み込もうとしてみたが、ご一緒している桐原書店の教科書編集に追われて果たせてない。
教科書の漱石がらみで生涯読みそうもなかったオースティン「高慢と偏見」を読み始めていたところなので、新書の目次に「オースティンによる発話の三分類」を見つけて早速飛びついたがまるで人違い。
ジェーンではなくてジョン・ラングショーという言語学者だそうでガックリ、でもなくそれなりに学習できるのだからこの本は強い。
「あとがき」に蓼沼さんが「理論そのものの事細かな理解よりも、理論を通して文学を読むことのおもしろさに気づいてもらうことに気を配った。」とあるから我が意を得ている。
若い頃は理論そのものの魅力に取りつかれがちだけれど、あくまでも理論はテクストを読むための道具であって、理論の吸収だけで終ったら悪しき自己目的化という外ない。
理論は時代を共に古びて行くものだから、理論に依拠しただけの論は理論と共に古びる外ない、と言ったら酷だろうから理論だけに頼ってはいけないヨ、と言っておこう。
ともかくおススメ本です!