大野和士  金子兜太  金時鐘  『論潮』  つかこうへい

スポーツ欄以外は遅れて読んでいることは前に記したけど、今日は1月30日の新聞の文化欄で朝日賞などの受賞者を知って嬉しかった。
「朝日賞」に大野和士金子兜太がいたのが1つで、大野は4・5ケ国語を操りながらヨーロッパで活躍している指揮者。
小澤征爾が評価され過ぎているとすれば、大野はまだまだ評価されていい能力を具えていると感じる。
同時代に活動を始めていたとすれば、大野の方が遥かに評価されていたに違いない。
もちろん小澤がダメだというのではなく、2年ほど前にブログでその能力を讃えたことがある。
大野に驚いたのは5年ほど前だったか、常任指揮者を務めていたリヨン国立オペラで楽団員がストライキをした時に、上演を中止せずに自分を含めた4台(?)のピアノ伴奏でオペラをやり遂げたと聞いた時だ。
小澤にはできない芸当だろうけど、大野はフツーにやってしまう才能を具えているところがスゴイ。
ただ聴く機会がまだ少ないのが残念至極。
金子兜太については注するまでもない日本を代表する現代的俳人、桐原の教科書でも反核の作品を収録している。
受賞の言葉でも、戦時トラック島で亡くした多くの部下たちを思う痛みを語っているのが印象的。
「大佛(おさらぎ)次郎賞」が金時鐘(キム・シジョン)の『朝鮮と日本に生きる――済州島から猪飼野へ』(岩波新書)に贈られたのも嬉しいかぎり。
受賞作は味読ながら分かり易くて素晴らしい日本語の詩を創っているのでおススメだ。
ただ分かり易いといっても《私の言葉の機微を干渉がましく今もって推しはかっているのは、植民地宗主国の言語の日本語です。》(受賞の言葉)という強い緊張感に満ちた詩語だから、その気になって読んでもらいたい。
一昨年、同人誌『論潮』(代表・山崎正純)が金時鐘の特集号を出したのもお手柄! 2センチもありそうな分厚いものになっている。
第六号(2014年)がそれで頒価は1部1000円
連絡先は ronchousurvey@yahoo.co.jp
振込先は ゆうちょ銀行  14140−20080121 ロンチョウノカイ

@ そう言えば今までに贈っていただいた雑誌をボチボチ拝読していることを記したけど、『論潮』第八号に掲載された伊藤佐枝さんの「在日朝鮮人文学としてのつかこうへい小説『広島に原爆を落とす日』(下)」という論文を読みさしたまま紹介できてないのを思い出した。伊藤佐枝さんと言えば志賀直哉論で一家言を築き上げている人ながら、何とボクが昔入れ込んでいたつか芝居を論じていたのでビックリして読み始めたしだい。
この作品はつかが演出したものを観た記憶があり、風間杜夫が戯曲には無い(?)日系ロシア人を面白おかしく演じていたはずだ。
ともあれ傑作「熱海殺人事件」ほどのレベルではないながら、在日朝鮮人としてのつかが創作した原爆モノとして貴重な問題作だ。
これは広島の原爆だけど、上記の金子兜太の俳句は長崎の原爆が背景にある。
世界で唯一の被爆国としての日本が、せっかく止めていた原発を再稼働しては恥ずかしい限り。
再稼働反対を表明した小泉純一郎は、その点だけ取り上げても安倍晋三よりは誇ってイイ日本人であり、人間だろう。