「陰獣」論  9月のテキスト配布中

そろそろ新学期も始まるということもあり、仕事のためのドタキャンはじめ欠席もあり、総勢6名というチョッと淋しいゼミとなった。
しかしヒッキー先生やマチルダさんを始めとする少数精鋭の感じで議論した。
それにしても初参加のサイ君が、ヒッキー先生と立大院の同期だと分かった時は驚いたヨ。
久しぶりに読んだ「陰獣」は期待を裏切ってツマラナかったけど、もともと推理小説や探偵小説(広くはエンターテイメント小説)は面白いと思ったことがない(読んでいられない)のは致命的だと自覚している。
(それなのにヒグラシゼミでは乱歩や松本清張の発表が多いのだから苦笑せざるをえない。)
ユースケ・ハマダマニア(浜田雄介)の「陰獣」論も読み直そうと考えていたものの、自家のどこにあるのか所在不明だったので果たせなかった。
クリマン君の発表は論の落としどころが不明確だったが、詰め切れていない段階だったとのこと。
秋に日本文学協会で再挑戦する可能性があるとのことだったので、今回聴けなかった人は日文協の学会案内情報に気をつけておくと良い。
発表で興味深かったのは、乱歩が意外に自己言及(自作解説)が少なくないということ。
「創作余談」の志賀直哉メタフィクション好みの太宰を想起させるが、自作やその登場人物を取り込んでいる「陰獣」は方法的に自己を弄(いじ)リ回している印象が強くて、まるで太宰作品を読んでいる感じ。
ただヒッキー先生も言うように、乱歩の場合は実体としての自分をアピールしたがっている分、底が浅く見えてしまう。
太宰はどこまでも実体を隠し通すための嘘(フィクション)に徹しているので、断然面白い。

ナオさんが家庭の事情でお休みだったのでお約束のケーキは食せなかったけれど、マチルダさんが高級なヨックモック菓子やチビ羊羹を差し入れてくれたので飢えることなく議論できた。

@ 次回9月24日(土曜)のテキスト・井上光晴「心優しき叛逆者たち」のPDFを配布しています。
  参加希望者は関谷までメール下さい。メール添付できない人には印刷物を送ります。
  ちなみにレポは一橋大院のオーバードクター・ヨリコ嬢です。