賀状をもらって(2)  是枝和裕  ミレーとフェルメール  竹田志保『吉屋信子研究』(翰林書房)

こちらの考えや気持が届いていることが分かって嬉しい、という他の賀状では「毎年楽しみにしている」という中で、マジメそのものの大学の先輩研究者からこの言葉を見つけた時かな。
仲間を元気づけるというのを生き甲斐の1つにしているので、「関谷さんと言葉を交わすとすごく励まされます」(他の研究者仲間)という類の言葉は嬉しいかぎり。
3つの部活もそのための活動でもあるけど、課題はボクの没後の横のつながりを保持してもらいたい、ということ。
それはともあれ、他には細かいけどサユリちゃん(学大修士)が、学大近代ゼミの機関誌『青銅』定年記念号に記して以来ボクがおススメしている、是枝和裕監督の映画を正月の特番で観たというのも届いた感じがして嬉しかったナ(ボクも2本観たヨ)。


驚いたのは宇都宮大卒のアッちゃんが(稲見)、《学生のとき「おふえりや遺文」に出会い、ミレーの「オフィーリア」を見に行ってからずっと西洋絵画が好きになり、年に5〜6回は東京に絵を見に行っています。》と記してくれたこと。
あのアッちゃんがねェ〜、と意外な感じがしたけどこんなに嬉しいことはない(宇都宮の美術館もクリムトが有って楽しめたヨ、2つの中のどちらの美術館だか分からないけど)。
西洋絵画好きの仲間が増えたということだけど、行く曜日が違うので美術館で顔を合わす可能性が無いのは残念。
それにしてもミレーの「オフィーリア」を見ることができたのはお互いラッキーだったネ、あの頃ロンドンのテイト・ギャラリーが改築するので貸し出してくれた機会に巡り合ったわけだから。
ボクの好みと評価からすれば、歴史に残る西洋絵画のトップスリーに入る名画だからネ。
もう1つの名画であるフェルメールの「牛乳を注ぐ女」(これに比べれば「青いターバンの少女真珠の耳飾りの少女)」など屁のようなもの)で、これが今日本に来てるので絶対に観に行く所存。
(念のために付言しておけば、ここで言うミレーは例の「種まく人」のジャン・フランソワの方ではなくて、いわゆるラファエル前派のジョン・エヴァレットの方のミレーね。)

もう1つ意外だったのは、同じ宇大でボクが担任したオギンが臨床心理士を目指していると書いてきたこと。
好奇心が強くて能力のある子だけど、今度は臨床心理学に関心を抱いているようで、これも共感を持てて嬉しい。

意外というか、勘違いされているのは学習院大で博士論文をまとめた竹田志保(学大修士)が、読んだ感想をブログに書くと言ったら「ブログ怖いので口頭で感想下さい」と言ってきたこと。
既に「今年(2018年)第一の研究書」とは記したけど、詳しいことが書けないままだと学会会場で(?)口頭で伝えたら、賀状に以上の言葉を記してきた。
ボクが見る限り、去年の研究書の中ではピカイチのものなのでおススメしておきたい。
吉屋作品の方はあまり感心しないし、不完全な全集ゆえに読みたくても読めないのに、図書館通い(?)して読破しながらテクスト分析したりした苦労の成果、ボクの理想とする「作品・作家を超えた研究書」だと言える。
さすがに学部時代では菅本康之さんのご指導を受けただけあって、基礎はシッカリでき上がっていたいたし、種々の局面で切れ味の鋭いところを見せ付けてくれた院生だったから、これだけ水準の高い研究書をまとめたのも当然。
もちろん気長に暖かく指導してくれた学習院大の、山本芳明・中山昭彦さんのお蔭でもある。
あとはキチンと評価できる具眼の読者を待つのみ、分厚いだけでレベルの低い研究書が流通している昨今、竹田志保の書は絶対にカネも時間も無駄にさせないのは保証する。