【ゼミ部】乱歩「鏡地獄」論  中川成美さんの論

 発表者のクリマン君が、参考文献を送ってくれた。

 中川成美さんの「視覚性のなかの文学ーー江戸川乱歩「鏡地獄」の世界」という、『日本文学』(2011年4月)に掲載されたもの。

 まだ読み始めたばかりだけど、いかにも中川さんらしく冒頭からベルクソンバフチンメルロ=ポンティといった有名どころから、美術関係(?)のフレッチャーやクレーリーの著書からの引用が続いて、むやみとハードルを上げて近寄りがたい感じ。掲載誌の特徴でもあるのだけれど、やたらと理論先行で理論書の読書報告の相貌を示しがちだけど、問題はテクスト分析につながっているかだから、論文によって価値の有無の差が大きく出ることになる。理論の断片とテクストの断片とのパッチワークのような愚論も見かけることになるわけだ。

 中川さんは大変な実力者だから、諸理論を十分に理解しているのは間違いないだろうけど、それにしてはいきなりさまざまな理論書からの引用が羅列されるので、これ等がテクスト分析にどう援用されるのか期待と不安が交るネ。理論偏向でテクスト分析の能力が欠落している研究者も少なくないからネ、中川さんはダイジョブだろうけど。

 要望があればメール添付で送るけど、理論書の引用はスルーしてテクスト分析だけを読んでもいいだろネ。