【見る】鷗外の子孫の命名など  「プレミアム・カフェ」

 NHKBSプレミアム(朝9時~、再放送深夜0時~)の「プレミアム・カフェ」が文豪の逸話を連載した番組の再放送をやり始めた。今日は鴎外で、長女の茉莉の女婿(娘のムコ)山田珠樹との間にできた初孫である男子の命名をめぐり、山田家との確執が展開される模様を面白可笑しく再現している。鷗外の案は、爵という漢字の冠の部分を「木」にしたもので「じゃく」と読ませるというもの。茉莉が西洋名前のマリーを意識したもので、鷗外が子供たちに西洋名前に音が通じる名前を付けたのは周知のことだろう。

 最初の妻(登志子)との間にできた長男の於菟(おと)をはじめとして、茉莉・杏奴(あんぬ)・類(るい)と付けた勢いで初孫に爵(本来の漢字はテレビで確認してもらいたい)と付けたかったようだ。珠樹がフランス文学者だったのを受け継ぎ、山田爵も東大でフランス文学の教員となった(若き三好行雄師も同僚だった時期があったと記憶する)。珠樹がフランス留学の際も、鷗外は意図どおり茉莉を同行させたと覚えている。鷗外が子供たちを可愛がり、子供たちも鷗外の回想を書く時に父への愛慕の念を表現しているのは有名な話(?)。しかし『晩年の父』(岩波文庫)の筆者である小堀杏奴は手放しで絶賛している一方で、意識家である(?)茉莉は数種の思い出話で父に対する批評的な眼差しを保持しているのも面白い。問題児だった末っ子の類の本は読んでないので語れない。

 ともあれ当時の日本にあっては珍しい、千駄木森林太郎(「しんりん・たろう」じゃない)の家における父子(早く自立した長男は除く)の微笑ましい生活が描かれている。番組後には高橋源一郎が解説しているけど、鷗外の故郷を「津山」と言ったような気がしたのはボクの聴覚の老化かな。正しくは津和野で複数回訪れたボクが(1度は修学旅行の引率)、死ぬまで1度は行くことをススメる素晴らし小さな田舎町。後半は故・立松和平が独特の語り口で千駄木や上野の鷗外の家を探訪しつつ紹介している。