【読む】ピエール・ロチの日本印象記ピエール、その2  ジャポヌリーとシノワズリー  現地妻  鷗外と漱石(の名作)

 先日紹介した「日本秋景」の後書き読んだけど、とても勉強になったネ。こちらが無知すぎるせいもあるものの、原題は Japoneries d"automne (ジャポヌリー・ドトンヌ)というのだけどジャポヌリーという言葉があったンだネ。シノワズリーは陶磁器や中国趣味という意味なのは知っていたけど(シノは支那ね)、ジャポニスムとは別に皮肉な意味合いや軽く扱う時にジャポヌリーという言葉を使ったそうだネ。ロチの印象記にもこの皮肉な味わいが出ているそうだから、原題はふさわしいものだったのだネ。

 同時代のシュール・レアリスムたちから攻撃されたものの、プルーストヘンリー・ジェイムズからは賞賛されたそうだヨ。日本では永井荷風がロチに私淑していたというのは初耳だったけど、「お菊さん」のモデルとなったおかねという現地妻とは情愛が生まれず、いら立ちと憂鬱をつのらせていたというのも初めて知ったヨ。「じゃぱゆきさん」の話を書いたばかりだけど、おかねさんもそれに相応するのでカネから愛は生まれないよネ。

 現地妻といえば、鷗外「舞姫」のエリスがらみで話題になるけど、エリスと鷗外との間には情愛が生じてしまったのだろナ。モデルとなったエリーゼは、鷗外の帰国船のすぐ後の船で来日したというのだからネ。多くの(?)留学生が現地妻と契約していたそうだけど(特にドイツ)、漱石はロンドンにいた頃の日記に《地獄(娼婦・註)を買う日本の留学生はバカだ》という意味のことを書いてたナ。女のみならず日本人仲間も寄せ付けず、引き籠って勉強ばかりしていたのでノイローゼになってしまったのも当然、という見方が強いネ。

 何度目かの下宿の婆さんが心配して、当時ロンドンで流行っていた自転車の練習をさせた経緯を記した「自転車日記」はサイコーに面白いヨ(角川文庫に収録)。名文章で一読の価値あり、おススメ! 鷗外の方は、「ヰタ・セクスアリス」によれば留学時代にはイイ思いをしていたようだヨ。未読の人は読むべし! 幼い頃のお医者さんごっこもメチャ笑えるし。新潮文庫で5ミリもないほどの薄さだから、すぐ読める。