【観る】森村昌弘は面白い  稲賀繁美のスゴサ⇔青山昌文は無能

 きょう久しぶりに放送大学「西洋芸術の歴史と理論」(第12回?)を見たら、実に若い頃の森村昌弘が出演していてチョッと笑えた。それにしても著名な絵画の画中人物になりきるという手法を一貫している姿勢はリッパ、それが意外なほどハイレベルの批評性を秘めているのを知ったのは、同じく放送大学「日本美術史の近代とその外部」の第3回のマネの回だった。以前にも紹介した気がするけど、「オランピア」の裸婦(モデルは娼婦と言われている)になりきるだけでなく、ベッドの横に立っている黒人女中にもなりきっていたと思う。講師の稲賀繁美さんとの対談で、(上記より数年ほど後の)森村は例えば白人娼婦になる一方で黒人女中にもなる自身が、黄色人種であることで持つことになる批評性を主張していたのに驚きかつ感心したものだ。稲賀さんは原画のネコを森村が招き猫に置き換えている意味などを指摘していたやり取りは、火花が出るほど刺激的だったヨ。成熟した森村と稲賀さんも共にハイレベルだからこその批評性の読み取りだったと思う。

 これと比較すると今日の講師の青山昌文は、同じくマネの「フォリ・ベルジュールのバー」(劇場の酒類の売り子女性が正面を向いている絵)について対談しながら、立っている女性がテーブルに手をついているけど森村には手が届かないのでマネはデフォルメしている、という程度のショーモナイ話しか引き出せていなかったネ。共に原作者の森村と対談しながらも、青山の番組を見ながらつい稲賀さんのスゴサを想起してしまうのだから、両者のレベルの差異の大きさは致命的だネ。

 ともあれ「日本美術史の近代とその外部」の再放送があったら見ることをおススメするヨ、どの回もスゴク刺激的だから。ゴッホとゴーガンの回もあれば伊勢神宮や陶器その他、さまざまなジャンルを取り上げながらも素晴らしい解説をしてくれるヨ。