【読む】ハルキ再読③  「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」  古川真人「ギフトライフ」

 朝日新聞(3月29日)の文芸時評鴻巣友季子)によれば今月ハルキの新作『街とその不確かな壁』が刊行されるという。実は40年以上前に「街と、その不確かな壁」(『文学界』1980年9月)という似た表題の作品が発表されているとのこと。単行本・文庫に入ってないのかな、ボクは知らないけど最近再読し始めている「世界の終り~」へと発展していく印象を受けている。ただの印象かもしれないのでここには鴻巣さんの粗筋紹介はくり返さないけど、「騎士団長殺し」よりはずっと興味を惹かれるヨ。

 文芸時評には「街と、その不確かな壁」から40数年経ってよりディストピア化した世界を創造した小説が紹介されている。古川真人という未知の作家の「ギフトライフ」がそれで、

 《近未来の日本。生活の苦しい庶民はある年齢になると、家族に「ポイント」を遺すために、安楽死、さらには医療開発のための生体贈与を選ぶ。自由はないが、隷属による安定がある。(略)「わたし」には、施設で寝たきりの「重度不適性者」の妹がいた。(略)妹の生体贈与に同意したことを「わたし」は悔い、落ち葉の散り敷く森をさ迷うことになる。そこには同様に家族を「委ねた」人びとが彷徨している。

 二つのパートは動と静、リアリズム風と奇想風。徹底した合理社会の暗がりに残る人間の非合理な感情、それが後悔や哀悼だ。》

 だいぶ省略してしまったけれど、「隷属による安定」「森」「リアリズム風と奇想風」「徹底した合理社会の暗がりに残る人間の非合理な感情」などに注目すると、「世界の終り~」や「街と、その不確かな壁」を想起させる。「世界の終り~」を再読していくうちにボクの思い込みにすぎないと判明するのかもしれないけど、前2回で触れた鼎談「村上春樹をめぐる冒険」の議論によれば、ボクの思い込みでもないことが伝わるかもネ。

 ともあれ少しずつでも「世界の終り~」を再読し続けようと思っているヨ。