【聴く】ベルリン・フィルのモーツァルト(とブラームス)  カール・ベーム  リパッティ  カラヤン

 「聴く」コーナーは久しぶりだけど、ネタは少なからずあるものの書いている余裕がない。今夜の「クラシック音楽館」(Eテレ、9時~)ではベルリン・フィルモーツァルト交響曲第29番とブラームスの第4番を放映するようだ。指揮のペトレンコはあまり知られてないけど、実力者ということで選ばれたと聞いた。お手並み拝見というほどではないけれど、モーツァルトの方は(ボクの大好きな)名曲だヨ。40番と同じト短調モーツァルトを特色つける調性)なので、ヨーロッパでは40番を大きなト短調と呼び29番と小さなト短調という呼び方もあると聞く。

 29番は自家には10通りほどの録音・録画がある中で、何といってもベーム指揮ウィーン・フィルのもの演奏がピカイチ! 特異な演奏でもあってテンポが唯一実にゆったりとしているので、速いものの倍くらいの時間がかかっているのではないかと思えるほど。アバドベルリン・フィルの演奏もDVDで録画してあるけど、おそらくペトレンコもこれと変わらぬテンポだと察している。ベームの演奏はオープンテープの実況録音で、むかし定時制の同僚が来た時に聴かせたらビックリしてたヨ、別の曲に思えるほど遅いからネ。実は先般オープンデッキが故障したので聴き直せないけれど、半年ほど前だったかNHKテレビで「昔の名演奏」シリーズの類で同じ演奏を放映したものも録画してある。

 

 話はそれるけど、オープンテープには上記のもの以外に貴重な演奏が他にもあって、これもむかし自家に遊びに来た大学院の後輩がビックリしたものがモーツァルトピアノソナタK310で、演奏はリパッティという昔のピアニストだからモノラルだ。故・吉田秀和のラジオ番組で録音したものだけど、吉田さんも絶賛していた唯一独自の演奏で出だしからして迫力がスゴイ! モーツァルトピアノ曲といえばチャーミングな演奏ばかりだから、リパッティのを聴くとロマン派の曲かと勘違いするほど強く訴えてくる。これがCDで出ていれば絶対入手しておくに限るヨ。

 オープンテープに録音された際立った演奏は、他にもクナパーツブッシュのワーグナーやアルノンクールの「水上の音楽」(ヘンデル)、以前に紹介した「ゴルドベルク変奏曲」(バッハ)の弦楽三重奏版などたくさんあるけれど、キリがないのでこの辺で。

 

 今夜のブラームスは、先般NHKが放映したカラヤンの演奏よりはマシかと思う。カラヤンの録画は古くなったせいもあるかもしれないけれど、(交響曲第1番の出だしを聴いた限りでは)音にふくよかさがなくてカラヤン特有の演出が前面に出た、まるでベートーベン(の奇数番号の交響曲)のような迫力が前景化していたネ。あの録画は見た目をそろえるような演出がヒドクて、例えば弦楽器のボーイング(弦の上げ下げ)をそろえるように楽団員に指示したものだから、当時ベルリン・フィルビオラ奏者だった土屋さんも反対していたのを覚えている。カラヤンはそこまで演出を徹底しようとするほど音楽の本質からズレた面もあったわけだけど、そこが嫌いだネ。