【状況への失言】パレスチナ(ガザ)における終りなき怨念(被害者意識)の連鎖

 東京新聞2月2日夕刊と3日の記事に「米、ユダヤ人入植者に制裁」というのを見つけて、やっとアメリカが戦火を収める方向で動き始めたかとチョッとだけ安心したネ。しかし記事によると《昨年10月以降、入植者による暴力が「劇的に増加した」》ことに対する「制裁」のようなので期待はずれでもあった。ボクの期待としては、昨年10月のハマスによるテロ行為以前のイスラエル入植者(+右派活動家)による、パレスチナ人に対する暴力(家屋破壊と殺人)を想起させつつの「制裁」だったからネ。

 個人的な見識を示せば、そもそもハマスの今回のテロを惹起させたのは2005年以降の入植者によるパレスチナ人襲撃だと思っている。だからイスラエルがガザを空爆し始めた頃にグテーレス国連事務総長が、「ハマスがテロを引き起こしたのは(イスラエル側に)原因がある」という趣旨の演説をした時には「よくぞ言った!」と心底から共感と感銘を覚えたヨ。案の定イスラエルはグテーレスに対する不信任案を提示したけれど、国際輿論が賛同するはずもなかったネ。

 イスラエルではハマスのテロの映像ばかり放映していることだろうが、2005年以来の入植者によるパレスチナ人に対する暴挙の映像と情報をこそテレビをはじめとするメディアに流すべきなのだ。そうすれば自分たちの側にも《加害》の事実があることが理解できるだろうから、ナチによるユダヤ人に対するホロコーストを再現しているようなイスラエルによるパレスチナ人に対するホロコーストの悪行を認識できることだろう。ナチに植え付けられた《被害者意識》に執着しているかぎり、入植者襲撃など己の残虐な行為を正当化して済ませて終ることになる。

 むかし放送大学高橋和夫さんの講義で、パレスチナ西岸地域にユダヤ人の入植地域が拡大するばかりなのを知って呆れて以来、パレスチナ人による国家建設はユダヤ人に阻まれ続けると絶望的なっているところに今回の事件(というより戦争)が起きてしまった。ユダヤ人の入植という形によるパレスチナ侵略を抑える(さらには既に入植した地域をパレスチナ人に返却する)ことから始めないと、この戦争には終りがない。

 ユダヤ人(イスラエル以外で生活するユダヤ人を含むのでイスラエル人とは記しがたい)の右派とネタニヤフ首相はパレスチナ人のホロコーストを目差しているものの、ハマスの全滅がありえない(次々と新たな「ハマス」が現れるのは必然)ように、パレスチナ人のホロコーストなどありえないのはナチによるユダヤ人のホロコーストが実現しえなかったのと同様だ。

 くり返し記してきたように、《被害者意識》は争いを生み・過激化するだけだ。自身の《加害者意識》を保持しつつ相手に対処するほか、ムダな争いを回避する道はない。