三島の「卵」・築山尚美・『文学』の終焉

先週、最初にやるのが「卵」だと知らされた時にはガッカリしたものだが、築山尚美譲の画期的な「卵」論を再読する機会だと思い直したら、作品も読む気になった。
何度読んでもツマラナイ作品だとしみじみ思う。とてつもなくクダラナイ作品。なぜ三島がこんなモンを書いたのか?! 怒りさえ湧いてくる。
でも久しぶりに築山論を読み、感動を新たにした。ホントによくできた作品論で、作品論に限らず記録に残る優れた論だと感心することしきり。
『青銅』か何かに書いたことがあったと思うが、最初に彼女の発表を聞いた時にはホントに驚いた。
こんなチンケな作品をこれほどまで縦横に論じ尽くせる才能もあるのだ、まるで異星人だ! とビックリしたものだ。
その後の築山譲はフツーの地球人になってしまってザンネンな気がしたが、高校でキモッタマ先生としてチョーガンバッテいると聞いて妙に納得できた。
でも「卵」論は後世に残さねばいけないと、築山譲の背中を押し続けて何とか活字にすることができて一安心。(『昭和文学研究』第51集)
これも書いた記憶があるが、これだけのものだからと思って当時の『文学』(岩波書店)編集部に推薦したらニベもない返事でガクゼン。
編集長が歴史出身者に代わるとこうも<文学>と疎遠になるのか、<文化>の流行とともに<文学>も『文学』も終るのか、という思いを強くしたのを覚えている。
それにしても築山論は深くて広い、未読の方は味読されよ!
さて今日の発表と議論だが、築山譲の達成に乗りながらレポが議論の水準を保証してくれたので、楽しく聴くことができた。
オカキューもマコトちゃんもそれなりに参加者を挑発し得たネタを用意できたのはリッパ!
受けて立った参加者もツッコミが的確で、これなら上級生など不要で面白い討論ができるというもの。
カズミン(助手と同名)の「世界って何?」という大きなツッコミのお蔭で、吉本隆明の<個体幻想>と<共同幻想>の話になったのも収穫。
聞きそこなったヒトは同情に値する。吉本の『共同幻想論』(角川文庫)がもう出てないとすれば、それこそ「世界」的規模の損失!