群像新人評論賞  宮澤隆義

新聞の文芸誌の広告を見ていたら、『群像』に新人評論賞発表とあった(昔は6月号だったと思うけど)。
そこに覚えのある名前があり、暫くしたら思い出せた(自力で想起するのがボケ防止法)。
宮澤隆義、1・2年前に安吾論を1冊にまとめた若手の研究者、数年前に送ってもらった「風博士」論を遅ればせに拝読してその実力を知った人。
5年くらい経っていたけど礼状を出したら、安吾研究会で挨拶をしてくれたあの若者だネ、早稲田出身だったと思う。

「優秀作」の受賞作品は「新たな『方法序説』へ−−大江健三郎をめぐって」という論だけど、安吾論を読んだかぎりでは健三郎でも何でも水準以上の論が書ける能力はあるから、きっと面白いだろう(が、健三郎には興味が無いナ)。
「優秀作」が本来の賞なのか佳作なのか不明だけれど、ハードルの高い賞をもらったのだから何でもいい。
でも選者が大澤真幸熊野純彦鷲田清一というので、熊野という人は不明だけれど大澤・鷲田といえば実力はあっても文学畑の人ではないからチョッと違和感。
それでも実績も能力もある人に認められたのだからスゴイ!
もう1人の受賞昨品がシモーヌ・ヴェイユ論とあるので鷲田さんの好みかな、いずれにしても忘れられた感あるヴェイユに注目する若者(?)がいるのは喜ぶべきだろう。
昔は饗庭孝男とか吉本隆明が論じていた思想家だけど、その後はほとんど名前を見かけなくなっている。
同調圧力とかで皆がみんな同じ流行の思想家ばかりに着目するのは芸が無くてツマラナイと思っているので、授賞した選者にも拍手を送りたい。

今月の『群像』には連載評論として「トム・ジョウンズ」論その他の評論も載っていて充実している。
あまり論じられることのないこのピカレスク小説を取り上げている武田将明という人は知らないけれど、期待できそう。
そもそも「トム・ジョーンズの華麗なる冒険」という傑作映画は見たことがあるけれど、原作の「トム・ジョウンズ」は読みたくても本が手に入らないので困っていたところ。
10月締め切りの太宰論がまだ7割がたしかできていないのに、今週12日の学会のために吉本を読んだり今月末のヒグラシの横光に手を出したり、その他様々な本に浮気しているのだから何もまとまりそうにない。
それも若さとのうち、と自分に言い聞かせているのだけれど・・・