立教大学会(その3)  沖縄  崎山多美  山之口貘

立大学会の感想をまだ記してないのがあって、ずっと気になっていた。
主に崎山多美さんの講演についてなのだが、たった今NHKスペシャルの再放送「あの日、僕らは戦場で〜少年兵の告白」を見ているのをきっかけに簡略ながら書き留めておきたい。
この番組は、沖縄北部の山中で米軍とたたかった30人余りの少年兵の記録を、アニメにもしながら編集している。
初めて明かされたようだが、沖縄の悲惨な事実は文字通り限りない。

先ほど崎山さんの本をアマゾンで見たら、どれもスゴイ値段が付いていて驚いたが、たまたま手許にある『ゆらてぃくゆりてぃく』が1万円だったのでビックリこいた。
これだけは読んでいたことをご本人に告げたけれど、崎山さんご自身も今や1万円の価格が付いていることはご存じあるまい。
ともあれ崎山多美の本が入手困難な状況にあることは分かったけど、これを機に読んで行こうと思っている者としては頭が痛い。
講演はその前に十分寝たせいもあってか、ものすごく面白く聴けた(記憶が遠のくばかりで残念!)。
「シマコトバでカチャーシー」という演題で、メモによるとカチャーシーとは掻き回すという意味だそうだが、崎山さんはシマクゥトバ(原音)で書くのではなく、それからも距離を置きながら「崎山語」で書くことを目指いているとのことだった(そのせいか、「ゆらてぃく〜」は難しい)。
立場が近くてもその同調圧力から身をかわして「私」独自の言葉で書くという自己決定は、勝手ながら文学研究のブームを避けるイチローの立場に重なると理解できたので、ますますこの作家を読んで行こうという気になったものだ。
オキナワというだけで思想的・政治的に共感を呼びやすい面もあるので、己を持するのは困難だと思われるけれど、崎山さんは簡単な道を選ばない潔癖さを貫こうといているようで、つい「共感」してしまいそうになる。
前日に池袋駅近くの沖縄料理の呑み屋「おもろ」で、石川巧さん(彼が崎山さんに紹介してくれた、感謝!)や学生たちと呑んだそうだけれど、ボクも院生と3回ほど呑んだ店なので情景が想像できて楽しく聴けた。
沖縄の詩人・山之口貘が入り浸ってサンシンも弾いた、というイワクつきの店である。
高田渡との関連で、以前貘の「生活の柄」という作品について記したけれど、その時もっとイイ詩があると言っていたのは「会話」という題だった。
よく見たら手許の『山之口詩文集』(講談社文芸文庫)にも収録されていたので、全4聯のうちの第1聯だけ。
 お国は? と女が言つた 
 さて、僕の国はどこなんだか、とにかく僕は煙草に火をつけるんだが、刺青と蛇皮線などの聯想を染めて、図案のやうな風俗をしてゐるあの僕の国か!
 ずつとむかふ

崎山多美や目取真俊(めどるま・しゅん)の小説もスゴイけれど、貘の詩も絶対おススメ!