漱石論  佐藤泰正  細谷博

佐藤泰正(編著)『漱石における〈文学の力〉』(笠間書院、1600円)を贈っていただいたものの、紹介が遅れてたままで申し訳ない。
佐藤先生(師弟の関係になったことはないけれど、「先生」と呼ぶしかない敬意を持ち続けている)のご配慮で梅光学院大学公開講座論集のシリーズの多くを贈っていただいてきた。
今回も先生に感謝の気持を感じていたけれど、何とご逝去なさっていたとは知らずに驚いた。
2015年11月に98歳の長寿を全うされていたのだけれど、まるで知らなかったのは吾ながらウカツそのものというほかない。
ここにご冥福をお祈りする次第である。

さて本書であるが、佐藤先生がラインアップして依頼したとのことであるが、冒頭のルー小森の短文(駄文)を始めとして石原千秋清水孝純・石井和夫・浅野洋など漱石論者(文学研究者ではないが姜尚中も執筆している)が並んでいるものの、「今さら」感を拭えないメンバーで読む気を起こさない。
執筆者たちも佐藤先生に言われたので書いたまでで、書きたくて書いたわけじゃないと言いたげな感じも伝わってくる。
3月11日に宇都宮大学のシンポジウムで漱石について小池清治氏と共にパネリストを務めるのだけれど、上記の漱石論者よりも専門の日本語学をはみ出しながら漱石のテキストを意外な観点から分析する小池氏の論考に刺激されている。
昨年だったか、細谷博氏の近著に対して不満を述べてしまったけれど、氏の旧著『凡常の発見』所収の漱石論からの示唆も楽しんでいるところ。