(補遺)中川成美の研究について

中川さんの啓蒙的な良書を紹介したけれど、言及した「中川さんらしさ」について言葉が足りなかったようなので補足しておきたい。
理論による把握が先行してしまい、作品分析が十分あるいは粗雑になりやすいのは、中川さんに限らずこの種の研究者に見られる傾向なので、若い人たちはその点だけはマネしないようにしてもらいたいものだ。
理論に依拠すれば切れ味は良くなりインパクトのある印象を残しやすいけれど、その分テクストの大事な細部が切り捨てられてしまい作品の面白さ自体が十分には伝わってくることがない。
この傾向は中河さんに限らず、佐藤泉さんもその代表だろうし、古くは林淑美がその典型だろう。
若い研究者がこれ等の優れモノのマネをして理論学習をするのはいいけれど、彼らの限界も自覚していないと偏頗な方向に進んでしまうので十分な自覚と注意が必要だ。
理論武装だけでテクストを《読む》力を付けないと、(何度もくり返してきたように)理論の断片とテクストの断片を拾い集めたパッチワーク作りから脱け出せなくなるのだヨ。