鏡花「甲乙」

期待を超えてずっと面白かった。
鏡花は読みづらいこと限りなし、なかなか作品世界に入っていけないので時間がかかる。
苦労した割には論が面白くない場合が多いのだけれど、イー君のは刺激的で退屈しなかった。
詳細は23日の学大の学会で聴いて欲しいけど(聴く価値は十分あり)、「震災小説として」読むという副題が十分に生きていた。
青空文庫で読めるので、ぜひ一読してから参加してもらって意見も言ってやって欲しいものだ。
分かりやすい要点はトラウマやモウニング・ワーク(喪の作業→moaning work を「喪の仕事」と訳すのはダサイ)、そしてチョっと難しいけど過覚醒かな。
鏡花というと谷崎同様で母親憧憬で読もうとする研究が多くてツマラナイけど、イー君は自覚的にその安易な読み方を避けようとしているのが気持良かった。
ただ表題の「甲乙」を質したら、先行論の紹介として登場する2人の芸技を指していると応えたのはいただけなかった。
大震災の年号じゃないかとツッコんだら、スマホで調べて1923年はミズノトであり甲(キノエ)は1924年・乙(キノト)は1925年だというから、「震災後」にハマって好都合だと判明。
細部の語釈には不明な点を残したけれど、表題以外はよく読み込んでいて面白い発表だった、聴くべし!