原武史の天皇論  金井美恵子  高橋睦郎と吉増剛造の美智子皇后讃歌

原さんの『大正天皇』については記したばかりだけど、今日読んだ朝日新聞の4月27日の「サザエさんをさがして」(昔の漫画を掲載して、話題になっている問題を解説している連載)に「皇位継承」という表題の下で原さんの意見を紹介している。

天皇・皇后が全国を回って国民とつながることで、結果として《今の政治に対するアンチとつながっている。超国家主義が台頭した昭和初期に似ている。》とあったのでビックリした。天皇・皇后の全国行脚を肯定的に受け止めていたけれど、そんな危険な兆候でもあるとはネ、気を付けよう。

原さんは天皇制の在り方だけではなく、《存続させるかどうかも含めて議論しないとダメだ》とも言っているそうだけど、そこまで現実的な視野として考えている人とはネ。そう言えば『大正天皇』でも大正天皇昭和天皇の全国行脚について詳しく書かれているようなので、終いまで読めばそういった原さんの考え方が理解できるのかもしれない。何でも当初は勇んで読み始めるけれど、途中で挫折することが多い己をハンセイしているところ。

 

5月2日の朝日には、「令和に寄せて」という連載に詩人かつ小説家である金井美恵子が寄稿している。元号を優先して使用しているのは、NHK産経新聞くらいのものだという指摘には笑えたし、令和を迎えて大騒ぎしている世間に苦言を呈しているのは全く同感。

しかしこれも驚いたのは、金井によれば高橋睦郎吉増剛造といった優れた詩人たちが揃って美智子皇后を絶賛しているという。金井は北野武も同列に上げているが、《私たち日本国民はなんという優雅で深切な国母を持ち、皇室を持っていることか、と幸福な思いに満たされ》(高橋)と言ってみたり、《万物の立てる響きにお心をお寄せになる皇后陛下の詩心はとても深い》などと書いているとのこと。

高橋や吉増と言えば、誰でも現代詩を代表する詩人と評価するだろうけど、その2人が揃って皇后を賛美しているのを読むと吾が目を疑ってしまう。作品と実生活の言動は別であるには違いないながら、ザンネンな思いは拭えない。原さんが超国家主義の危険を想起していたのはこういうことか、と思えば心が寒くなるというものだ。