【見る】「いだてん」  ベルリン・オリンピック  ソンキジョン(孫基禎) 猫ひろし  黒人選手の、差別に対する抗議とその後  白人ノーマンの共感

 今ちょうど「いだてん」見ているのだけど、マラソンの優勝者が「日本」の孫基禎なので主人公(?)の金栗四三はじめ喜んでいる場面が写っている。正確にはクドカンのシナリオでは、孫が朝鮮人で金栗と同じ足袋を履いて優勝したので、足袋屋のオヤジを胴上げして喜びを表現しているわけだネ。ドラマでも「映像の世紀」の映像を使っていたけど、孫自身は表彰式で日本国家が流れるとは思わなかったので動揺している様子であり、孫(と、もう1人の朝鮮人受賞者)は胸の日の丸をもらった花束(?)で隠している様子だった。「国籍」は植民地化されたので「日本」ではあっても、民族は朝鮮人だというアイデンティティが確固としていたからだと思う。

 「映像の世紀」でもその後、朝鮮人の新聞では胸の日の丸を消して報道したので、発行停止の処分を受けたことまで触れていなかったけれど(ドラマでもそこまでは描かないだろうナ)、ボクの記憶では事実だヨ。そしてこのソンキジョンさんこそ、ユウミリ(柳美里)の祖父にあたる人で、彼女が祖父をモデルにして「朝日新聞」に連載したのが「八月の果てに」という小説なのだナ(長くなったので新聞連載は中途まで)。

 その冒頭は確か「すーすー、はーはー」というマラソンの呼吸法の描写で、金栗がドラマでやっていたやつだネ。ソン選手の気持を慮(おもん)ばかれば、オリンピックに優勝しても「日本人」として頑張ったわけではないので、複雑で不愉快極まる思いだったと思う。以前「猫ひろし」という芸人が、(マラソン選手のいない)カンボジア代表としてオリンピックに参加したことがあったけど、ソンさんの気持を想起するまでもなく許し難い行為で、未だに殺意を感じるヨ。当時のメディアも厳しく批判していなかったと思うけど、日本人全体がソンキジョンさんに日の丸を強いた黒歴史を反省できてないのだネ。

 

 「映像の世紀」にも写し出されていたけど、(ロサンゼルス・オリンピックだったか)短距離で優勝したスミスと3位になったカルロスが差別に憤慨していた黒人だったので、表象台でアメリカ国旗に向けて黒手袋を突き上げて抗議したためメダルを剥奪されたのは有名だネ。しかし2位になったオーストラリアの白人選手ノーマンも、単にスルーしていたわけではなかったということは「映像の世紀」で初めて知ったヨ。表象台で「僕は何をすればいい?」と2人に聞いたそうだけど、無言の支持を表明したノーマンは、その後2人をはじめとする黒人から崇敬されていたとのこと。泣かせるのはノーマンが亡くなった時には、スミスとカルロスがオーストラリアまで飛んでノーマンの柩を担いだ映像だったネ。録画してなかったので、再放送してもらいたいネ。皆さんにもおススメ!