【読む】品田悦一『万葉ポピュリズムと斬る』(講談社、1800円・税別)  政権批判・万葉研究者批判  ノーテンキな中西進

 なぜボクが万葉集の本を取り上げるのかと不思議に思われるだろうが、著者の品田さんはマエタカ(前橋高校)の後輩なので、斎藤茂吉の本を出してからは近代文学専攻のボクにも著書を贈ってくれるようになっている。刊行当時だいぶ話題になったという万葉集論は別途入手してあるけど、読みかじったまま万葉研究者のハルチンに位置づけを聞いたことがある。それによると品田さん以前の万葉研究がテクスト本位だったものを、テクストを外から(歴史や政治的観点から)捉え直したところが評価されたとのこと。今回の書はそれを啓蒙的に、さらには挑発的に・時代批判的に説いたもので文章は分かりやすい。

 しかし改元を機に政権批判も含めて品田さんが闘っていたことは知らない身には、事情を知らぬままに巻頭から批判が展開されているので、その点は少々理解しにくかった。ネットで批判や論争を展開していたようだけど、ネットに関してはあまり関知しないので知らなかったナ。ただ令和の命名者としてすぐに自ら露出し始めた中西進という研究者には、以前からウサン臭さを感じているネ(ある研究誌に書いたボクの研究時評が過激すぎるというので、編集長の中西が書き直せと言ってきた。編集委員山田有策さんはそのまま載せるように言ってくれたそうだけど)。だから「令和」という言葉にはキナ臭い匂いがして危険だという品田さんの危惧・主張にはすぐに同調できたネ。ノーテンキな中西は闘争そのものが嫌いで回避したがるから、万葉の「令和」という言葉に隠された闘いが読めなかった、というのが品田さんの批判だと受け取ったヨ、面白い!

 品田さんは意外にポレミーク(論争的)な人らしく、以前には『鬼酣房先生かく語りき』という本をいただいたけれど、取り上げられている話題に興味がなかったのでハルチンに上げてしまった。その後まちがえて同じ本の2冊目まで頂戴したけれど、そのまま第一演習室に置いておいた。演習室なら万葉ゼミの皆さんで、品田さんに関心のある人が手に取ると思ってネ。「かく語りき」はともあれ、今度の「万葉ポピュリズムを斬る」は段違いに面白いからおススメだヨ。