昨夜、再放送を見てからこのブログ記事を見たら、急いで情報を流そうとしたせいかダブりや誤解に気付いたので削除・訂正しつつ詳細な記事を記すことにした。
今日夜の「日曜美術館」(Eテレ8時~)は、竹橋にある近代美術館が自分の所蔵品だけで特集したものを取り上げる(再放送)。「記録をひらく 記憶をつむぐ」とかいうテーマだけど、先週見た限りでは戦争画が多くて迫力満点で著名な藤田嗣治の「アッツ島玉砕」(デカい!)も見ることができる。MCの坂本美雨(坂本龍一と矢野顕子との娘というだけのタレントらしいけど、以前特集された国吉康雄も知らないのは困ったネ)が玉砕という事実と絵画の迫力のショックで涙まで流していたので、ノーテンキながらも感受性は豊かなンだナと好感が持てたネ。(以前記したように)佐々木蔵之介だったら《他者の痛み》が通じないほど感性が鈍いので、こうは行かなかっただろうから。
それにしてもこの絵のために藤田が1日10時間描き続け、1ケ月以上足らずで完成したというのはビックリしたネ。藤田は早くからフランスに留学したままだったので、その負い目もあって日本のために戦争画に打ち込んだのは確かだ。その誠意を度外視して戦後に画家仲間も含めて批判されたので日本を離れたと放送では解説していたけれど、ボクが知るかぎりでは画家たちが自分の責任逃れのために藤田に代表して戦争責任をとるように要求したので、藤田は呆れつつ日本(人)に失望したため日本人名を捨ててレオナルド・フジタとしてフランスに帰ったとのことだったヨ。帰仏後には宗教画や子供の絵ばかり描いたというのもうなづけるネ。
宮本三郎の戦争画の解説では孫の宮本楊一郎さんが出演していたのは驚きだったネ。宮本さんは放送大学教授でアメリカ文化・文学を講義しているのを何度も聴いたけど、引用を自分で読む場合(ホントはアナウンサーなどに読んでもらって引用を差異化すべきだけど)、「ここまでは引用です」と註して混乱を避けている点では、おバカで無神経な島内裕子などとは差異化される存在だネ。
ともあれ宮本三郎の作品のうち(シンガポール作戦でイギリス軍に降伏を迫る場面だというのはボクのカン違いで)フィリピでアメリカ軍に降伏を勧めた日本軍の交渉の画面では、カメラマンたちまでが描かれている構図は反戦的意図があったかもしれないという解説には感心したネ。敗戦間近の特攻隊がアメリカ艦に突撃した迫力に満ちた作品には、ドラクロアやターナーの影響があると解説していたけれど、「坊っちゃん」で言及されるのどかなターナーのイメージしか持ってないと伝わりにくいだろう。ターナーの機関車のスピードを描いた作品や歴史上の海戦図を想起すれば、宮本三郎作品との共通性は十分に理解できるだろうけどネ。
戦後のタイの画家が描いた一見平和な情景には、日本軍の破壊の跡も読み取れるというのもナルホドだった。解説者(鈴木勝雄)がこのタイの絵画で注目すべきなのは、シンガポールなどの戦争を戦った日英の軍隊ばかりに目を奪われ、現地住民の犠牲に想像を及ぼすべきだと指摘したのは重要な問題だ。ひところ大岡昇平「野火」では日米軍の争いばかりに焦点が当てられ、現地の住民(まさに野火の存在)が切り捨てられているのは作品として大きなマイナスだと指摘されたが、それと同じ問題が鈴木氏によって再確認を促されていると思ったネ。そもそも戦争画の問題は、戦争文学と切ってもきれないほど通底しているのだけどサ。
近代美術館は萬鐵五郎(よろず・てつごろう)の「裸体美人」(マチスと対照される作品)はじめ少なからぬ名作も所蔵しているのだけど、今回これ等の所蔵品も見ることができるのかどうかは気になるネ。