【読む】森村泰昌の芸術  稲賀繁美の美術論  三島由紀夫の「宿題」  イチローの三島論 

 現在「朝日新聞」の「語るーー人生の贈りもの」の連載は、美術家の森村泰昌を特集している(今日で12回)。久しぶりにボクの興味を惹く人の特集なので楽しく読んでいるけど、第10回は作品「肖像(双子)」の写真も紹介されていたものの残念ながらカラー写真ではなかった。写真が小さいせいもあって「双子」のどちらも森村自身が画中の人になっているのが分かりにくいけど、作品はマネの「オランピア」だから双子といのは白人の裸婦(モデルは娼婦と言われてスキャンダルとなった)と召使の黒人女性なのだネ。ここまで書けば伝わると思うけど、森村泰昌ゴッホの自画像など著名な絵画の画中の人物に仮想して写真にする作品を創造している美術家だネ。

 記事は森村が人前で裸になるのはすごく抵抗があったということに焦点を当てていたけれど、この作品はそれを超えてはるかに興味深いものを蔵している。右下に写っているのは黒く塗った招き猫なのだけど、マネの「オランピア」では生きた猫だったものを招き猫にしたのも森村に面白い意図があったとのことだけど、詳しいことは稲賀繫美さんの放送大学「日本美術史の近代とその外部」の第3回が再放送されるのを見て欲しい。森村がゲストで出演していて奥深い議論をしているヨ。稲賀さんの講義は全15回ハイレベルで、放送大学中の一押しの番組だからボクは全部録画してある。第3回は以前メールでカヨちゃんに勧めたこともあったけど、カヨちゃんは見てくれたのかな?

 記事の末尾には三島由紀夫自裁に触れ、1970年は芸大受験の浪人中で衝撃を受けたとのこと。

 《小説家である三島がフィクションの世界の一線を超えて、行動する人間として決起した。この出来事は、その後の僕の大きな宿題のひとつとなりました。》

 ボクはこのとき大学1年生(2度目?)だったけど、やはり大事な「宿題」を三島から突き付けられた思いがあったネ。その答えが翌年書いた「『金閣寺』への私的試み」で『シドクⅡ』に収録したボクの最初の論文だネ。大学生時代のイチローを知るには分かりやすいものだヨ。他の収録論文とは異なり、若い情熱に満ちた書き方をしてるネ。