【読む】宮下拓三『もしも、くずし字が読めたらな』

 我々近代文学研究者はおおむねくずし字が読めない(明治文学専攻の人で例外的に読める人もいるようだけど)。ボク(等)も博士課程受験の時の面接試験で読まされたことがあったけど、勉強としては3・4日だけ「一夜漬け」したことがあるだけだネ。読めればそれなりに面白くて便利でもあるだろうけど、そのための労力と時間が割けられないので読めないままだヨ。歴史学磯田道史さんが、中学生の頃から勉強したお蔭で古文書(こもんじょ)を読む喜びをくり返し語っている気持はよく分かるネ。

 そんなことだからむかし桐原書店の教科書を一緒に編集していた宮下拓三さん(最初の著書『徒然草全読解』(右文書院)をブログで紹介済み)から表題からして魅力的名な『もしも、くずし字が読めたなら』(右文書院、税込み3960円)を頂戴して喜んだものの、興味を惹かれる一方でハマったら他の読書の時間を奪われてしまうという危惧があってしばらく放置してあった。いつまでも礼状出さないのも失礼なので、昨日最初から読み始めたらむやみと面白いので困っている。抑えていた関心が刺激されて力を増している感じだネ。

 全9章の中の第1章は「定家仮名遣い」で初歩的な解読を解説してくれているし、先取りして覗くと第6章「俳人歌人の手跡」では北原白秋草野心平の手跡が写真入りで紹介されていて楽しい。しかし今は火野葦平加藤典洋柄谷行人などを中心に読書しているので本書を読んでいるゆとりはない、手もとに置いておくとヤバイので仕事机から遠ざけておきながら、思い出した時に目を通すことにしよう。

 ボクよりずっと興味のある人、あるいは歴史や文学に関心がある人なら本書を読みたくてたまらないだろネ。ガマンすることはない、すぐに購入して読み始めるべし!