【読む】市川紗央「ハンチバック」②  又吉直樹  高見順 

 朝日新聞の連載記事「好書好日」欄の「下」の紹介は前回のブログに記したとおり。芥川賞作品がらみの私小説嫌いといえば、もう1つ言及しておいた方がいいだろネ。文学からすれば他分野というほかない芸人の又吉直樹芥川賞を獲って前代未聞の広がりで話題となったけど、売れ行きも史上最高(?)ではあるものの評価をめぐっては賛否両論で騒がしかったのを覚えている。ボクが「火花」を読んだのは少し遅れてからだけど、少し読んだだけで作家の文章だと直観できて受賞も無理はないと感じたネ。でも読了せずに放置したのは周囲から物語内容が伝わってきたため、芸人が芸人の世界を描いたという点で私小説の臭いを感じたからでもある。又吉が作家として評価されるには第2作が問題になると思ったものの、いざ「劇場」が出てからもスルーしたままなのは私小説の世界を免れていない印象だからだ。又吉は人間として素晴らしいと思っているけど、それを小説を通して知りたいとは思えないしネ。

 現代の作家・作品から離れて言えば、個人的に好きな作家である高見順も「私生児」ネタの私小説は評価しないしツマラナイものばかり。太宰作品とは違ってベタなのだネ。自分を相対化しえた「故旧忘れ得べき」や戦後の「いやな感じ」は絶対おススメだネ。特に後者の一人称語りがスゴイ!