【読む】成田龍一の司馬遼太郎論  《時代小説》と《歴史小説》

 以前、国分寺に行くたびに寄る古書店「七七舎」の100円コーナーでゲットした、

 成田龍一『戦後思想家としての司馬遼太郎』(筑摩書房、2800円)

を読んでいるのだけどメチャ面白い! さすがに文学にも理解力のある成田龍一さんの著書だネ。学部生時代からの友人が自分の本を(司馬遼に関心が無かった)ボクに貸してまで読ませてくれた「坂の上の雲」や「竜馬がゆく」の2冊を論じている箇所を読んだのだけど、《時代小説》(竜馬~)から《歴史小説》(坂の上~)への転換という分析は鮮やかで刺激的だ。いわゆる《時代小説》をほとんど読んだことがないボクでも、成田論は分かりやすくて納得できる。「坂の上の雲」を読んだ時、司馬が明治という日本近代の《歴史》を語ろうとしているのがよく伝わってきたネ。「竜馬がゆく」では竜馬はじめ海舟などの人物の魅力を語ろうとしていたものの、人物たちを動かしている時代=《歴史》を描こうという意図は弱かったからネ。成田論をベースにすると、龍之介は《時代小説》止まりで鴎外は《歴史小説》にチャレンジした、という違いも改めて分かったネ。

 ともあれ成田さんのお蔭で司馬遼の「一粒で二度おいしい!」面白さが分かった気になっている。ずいぶん前に西南戦争を語った「翔ぶが如く」全5巻をそろえたものの未読のまま放置してあるのを、改めて読んでみようという気にもなっている。

 成田本をボクに司馬遼を読ませた友人に勧めたところ、アマゾンで4000円弱で出ていたそうだ。そのくらいの価値はあるだろうけど、皆さん古書店でこの本が安く出ていたらお買い得だヨ! それにしても七七舎の100円コーナーは画集はじめ掘り出し物がたくさん並んでいるので、学大や行きつけの病院に行くために国分寺へ行く時には寄らずにはいられないヨ。