【読む】『昭和文学研究』最新号(付加)  上村和美・鈴木啓子さんの書評も掲載(改稿版)

 既に紹介した『昭和文学研究』第88集にはメイさん(上村和美・元学大助手)とケイコ先生(鈴木啓子)の書評も載っているにに気付いたヨ。ケイコ先生(と言っても宇大の卒業生には通じても学大じゃ分からないか)は鏡花研究の主柱として支えになっている人だから当然書評も鏡花論だから、鏡花に無知なボクには言えることはない。

 メイさんのは中谷いずみという未知の人の『時間に抗う物語 文学・記憶・フェミニズム』という本を評したもの。フェミニズムという言葉だけでボクら後期高齢研究者は期待する気持が失せるのだけど、メイさんは主にプロレタリア文学を研究しているからフェミニズムジェンダーの観点を持った論文を評価するだろうけど、そういう観点の面白い論にはめったに出会えないものだ。書評を読んで感じたのは、本書もご多分に漏れずありきたりのプロ文系譜の主義主張から自由ではないパターンそのままであり、狭い世界観に閉じている印象だ。

 メイさんは何とか本書を評価しようとしているものの、上手く行かないのはメイさん自身もこの狭い世界観を脱しきっていないからだろう。もちろんメイさんは昔から掃いて捨てたい気持になる低レベルのプロ文研究者ではないので、本書のマイナス面を見透かしているもの言いが読みとれる。言葉尻をだけを紹介しておけば、

 《目撃者の証言に求めている点は少々物足りなさを感じた。》

 《作品外部へと性急に論点がずらされてしまったような印象を受けた。》

 《今後は「彼女たちの声」だけでなく、あらゆる立場の人々の声に耳を澄ませることが必要であり、文学にもそのような姿勢が求められてゆくことは必至であろう。》

ということになる。

 これらの批判的視野を堅持しているメイさんが自らの著書を刊行する日を待ちたいが、メイさんが並みのプロ文研究者と一線を画するのはイデオロギー先行ではなく、テクストを《読む》能力だから十分期待できるネ。