太宰は(大国論も)難しいけど面白い!

魅力的な作品である「水仙」ですが、レポが「僕」を中心化するという意外な読みを提示したせいもあって議論沸騰!(もう一人のレポは遅れた上単調すぎて問題外!)
盛り上がった議論を踏まえながら(イチローの)結論を急げば、
・「僕」の草田夫人に対する、愛憎表裏したアンビヴァレントな心理を踏まえる。
・「僕」と草田夫人とが共有するものと、両者の差異を明確に押さえる。
以上の2点に気を付ければ、以下が読みの基本になるものと(イチローは)思う。
・両者が共有するナルシシズム水仙)に対する自己嫌悪が、「僕」が夫人の絵画を切り裂く行為になった。
・「僕」には「天才」だという自惚れは無いが、夫人はヒョッとしたら「天才」だったかもしれないという「不安」が拭いきれない(夫人は「もう一人の忠直卿」だった<天才かもしれない>可能性があった)という両者の差異を「僕」が自覚している(という点を落とすとテクスト解釈に苦労するだろう)。
スッキリしてもらえたようだが、スッキリし過ぎて物足りないという印象を覚えたムキもあるのも、読みの問題としては当然。
少なくとも大国論に比べると、圧倒的に理解しやすいことだろう。(ガハッ!)
今回の大国論は、論理よりも比喩に逃げた(イチローの印象)感じで、その分解りにくく説得力が弱まったと思える。
それにしても奇抜な着想は及び難く、学び難いながらも枠を破る意欲は目指して欲しい。