悪ガキに戻って学会に

毎年、師・三好行雄の命日近くに開催される、日本近代文学会春季大会に合わせて全国から仲間が集まって墓参りをして、その後で三好亭におじゃましているんだけどネ。
今年は23回忌に当たるそうだけど、そのせいかいつもより多く集まった感じだったネ。
いずれも先生やご家族に人一倍親しくしていただいた(いただいている)面々なので、形だけでない偲ぶ心が伝わってきて気持良かったネ。
親類縁者の場合もそうだけど、亡き人や家族のためではなく、世間の目だけを気にして自分のために法事をやりたがる人もいるけれど、そういうのとは違った雰囲気が溢れていた感じだネ。
奥様が忘年会の時以上にお若く見えたのも嬉しい驚きだったけど、先生のご命日というだからというだけでなく、気持の触れ合える人達だけでの集まりだったせいかネ。
昨年辺りから奥様ではなくワカが料理して食わせてくれるのだけれど、これがめっぽうウマイんだネ。
奥様の野菜の煮物は他では味わえないものだったんだけど、ワカの煮物がまた絶品でビックリしたネ。
野菜と一緒に煮てある鶏肉がウソみたいに旨いんだネ、これが。
鶏肉は学生時代にカネが無いから焼き鳥屋で呑むことが多かったせいか、今は食べたくない物なんだけど、次々と食べたくなるほど美味だったのでウソみたいと感じたんだネ。
楽しい一夜について語っているとキリが無いので止めるけど、この日は院同期のキュートクが仕事で来れなかったので、翌日の学会会場で待ち合わせたんだネ、代わりに。
もう一人の同期のエロシと3人で会おうということになってネ、まるで院生の頃とその後の時代を思い出すネ。
あの頃は学会の会場に行っても、あまり発表を聴かなかったもんだネ。
今と比べてツマラナイのが多かったせいもあるけど、ボク以外は会場の中にさえ入らなかったもんだネ、良い子ぶるわけじゃないけど。
ただ全員が集まるのを待って、それから呑みに行くことが殆どだったネ、あの頃は。
だから今回会場に行ったら、中ではエロシが後ろの席で寝ていたし、キュートクにあっては外でひたすら煙草を吸ってたので変な安心の仕方としたネ。
ボクは石川巧さんの発表だけは聴きたかったので、会場で会おうと提案したくらいだから、恥ずかしながら案内された一番前の席で聴かせてもらったネ。
石川さんの発表は、以前学大で清張についての論を聴いたことがあるけど、清張に興味が無いので良く分からなかった記憶があるんだネ。
今回のは菊池寛だったので、よく理解できた気になったのは収穫、「島原心中」は以前演習の授業で取り上げたことがあるしネ。
石川さんを聴いてすぐに退場したら、呆れた目で見られた感じがしたけど、「自由の女神」に導かれる思いで見えないバリケードを越えられたネ。

ともあれ学会会場から新宿の飲み屋に場所を移して3人で呑んだのネ、家族以上の水入らずという感じで。
昔と同じように安らぐんだナ、3人でいるだけでネ。
別に話をしなくてもいいんだけど、話しても意味の無いバカ話ばかりなんだけどネ。
キュートクに言わせれば、ボクが若返った感じに見えたそうだけど、きっと学会の役員を降板させてもらったためかナ。
大会でも聴きたい発表だけ聴いて帰るというのは、この十数年ありえなかったことだしネ、懇親会にも出ずに。
キュートクがジジむさいと自覚していたのは、スキーの季節が終わったせいだというのはハッキリしていたネ。
(昔はそれなりに野口ゴローだったのにネ。)
エロシが山歩きでボクが海釣りに行かないとヤッテラレナイ(生きてられない)とすれば、キュートクからスキーを奪ったら死ぬばかりだからネ。
一緒に同じ時間と場所を共有していれば満足だったのだけど、今回はキュートクから得られたものがオーディオ関係で2点あって得した気分だったネ。
彼は昔1対で100万もするスピーカーを買ったのはいいけれど、アパートに納まらずに仕方なく実家に置いといて里帰りしたら、親父が森進一を聴いていたので愕然としたそうだネ。
そのくらいのオーディオ・マニアでもあるので、キュートクに聞いたらボクのオーディオ装置の問題点がハッキリしてホント助かったネ。
早速修理と買い替えをするつもり。(ボクの聴くのは「モーツァルトからアグネス・チャンまで」と言ってたけど、アグネスは十数年聴いてない。)
ブンガク・バカにしか見えないキュートクがオーディオに詳しいのも奇異かもしれないけど、好きなものというのは入れ込むと人知を超えるネ。
キュートクの息子は工学部出身だそうだけど、親父との関連は無さそうだネ、オーディオも工学系かもしれないけど。
ただ、この息子はボクの2冊目の本の帯の「学ぶべきはイチローの広角打法です!(関谷イチロー)」というポップ(?)に大受けしたそうだから、親父以上に言語感覚が研ぎ澄まされているのかもネ。
同じ本の帯の「糸井、参ったか!」というフレーズは後輩のユースケ・ハマダマニアからは褒めてもらったことがあるけど、自信があった「広角打法」についてはキュートクの息子以外には反応ゼロだったからネ、嬉しかったナ。
どちらのフレーズも小池のオヤジ(学大の元同僚である正胤先生)には、「研究書にこんな帯を付けるなんて、あなたは不真面目だ」と叱られたけどネ。
酒気「帯び」でダラダラと書いてしまったけど、「帯」を解いた映像についてもキュートクが得意なので、何らかの情報が来るかもしれないネ、オーディオ情報ついでに。
エロシは名前と真逆で専攻も趣味もエロとは無縁のアカ専門(バカだネ)、キュートクは専攻文学も趣味もピンク専門という対照はこの数十年動いていないネ。
ボクは記した通りの「広角打法」、より正確には「口角堕呆」と記すべきかナ?