『すばる』2月号  小林秀雄特集  山城むつみ  東浩紀  矢野利裕  荒井裕樹

小林秀雄の新資料が掲載されているというので、あまり乗り気でなく購入したけれど、今月号の『すばる』はおススメできる。
小林資料は推測した通り、ほとんど新しい発見は無いけれど、埋もれた資料を探す努力が貴重なのは言うまでもない。
小林に関しては特に戦争中の活動に不明なところが多く、この時期の小林を論じようとすると落ち着かない。
だから山城むつみさんが『新潮』の小林秀雄特集(2013・4)で戦時中の小林の批評文を緻密に論究しようとしている姿勢には、細部に拘り過ぎているとはいえ、とても刺激を受けた。
安部公房についての木村陽子さんの博論を審査した際に、先行研究が行き届いていなかった時代の公房の言動が緻密に追究されていたのを見て、とても羨ましい気持と小林を放置していた自分(たち)に自責の念を抱いたものだった。
ともあれ『すばる』には、その山城さんと東浩紀へのインタビュー記事も掲載されていて読み応えがあるので、小林秀雄無しでも1000円足らずの定価ではお買い得過ぎる印象だ。
その上、目次をよく見たら矢野利裕や荒井裕樹といった東京学芸大学卒業生の名前も並んでいて驚いている。
矢野氏はサブカルチャーの評論家として活躍しているのも知らずに、昨年ヒグラシゼミで発表してもらったし、荒井氏はハンセン病者達の文学活動を追求した博士論文を本にしたに止まらずに、精神科病院の中の芸術活動を掘り起して論究した『生きていく絵』(亜紀書房、2200円)を出版し、氏自身の殻を破って一般の読者にも歓迎される書き手に変貌しているようでとても嬉しい。
テレビや新聞の美術批評でも健常ではない人々の芸術活動に光が当てられ、評価する動きが見られるので、荒井氏の書はとてもタイムリーでもあり勧められる。

@ 下書きのまま放置しておいたら、タイトルだけでいつまでも更新されてないのは病気にでも罹ったのか? と心配してくれるメールをもらったので、言い足りない気もするがこのまま公開します。