村上春樹「午後の最後の芝生」  松波太郎

授業に集中できない留学生を含めても前期の半分以下の受講生が5名になった中で、留学生のリュー君が1人で(前期は日本人院生と2人だった)ガンバッタのは評価できる。
作品の選択にはセンスを示したものの、まだテクストの読みが不徹底で先行研究から自身の論を差異化できていない。
議論の余地がたくさんあるテクストながら言及しえたのは少な目だったので、これからもまだ膨らませ得る論点で自説を展開できれば可能性が広がるだろう。
3人の日本人院生がテクストの細部を立ち上げながらグッドな突っ込みをしたので、リュー君にはとても参考になったはず。
この作品を東京学芸大学在職中に、顧問をしていた昭和ゼミで取り上げて議論噴出したけれど、最後に後の芥川賞候補作家・松波太郎が《僕は芝生を刈りながら勃起するというのが気になるンですヨ》と発言したために、ゼミではそれ以来「ボッキマン」と呼ばれるようになったことを思い出した。
ボッキマン太郎は『群像』今月号にも小説を発表している。

次週はカンナイ君が守備範囲の安部公房から、短篇「手」について木村陽子の先行研究をたたき台にして論じる。
次々週は上野さんがお得意の三島由紀夫から、短篇「鍵のかかる部屋」を取り上げる。
その次は○○さんが松本清張作品について発表すると言っているものの、どうなることやら。