北斎  「応為担担録」  山本昌代

このところ長く北斎ブームが続いているのは嬉しいことだ。
今も来年1月まで「北斎ジャポニスム」展を国立西洋美術館でやっている(個人的には敢えて行くほどの魅力は感じないけど)。
北斎のみならず娘の応為にもスポットが当てられ、父の北斎よりも見事に女性を描いた作品を(テレビで)見る機会が得られて納得できた。
応為とは画号で本名は栄(えい)だそうだけれど、北斎が名前ではなく常に「オーイ」と呼んでいたので画号にしたというエピソードは笑える。
ユニークな女性作家の1人、山本昌代に「応為坦坦録」(河出文庫あり)という応為を描いた作品があるのは、ハカセ(近藤裕子女史)から教えてもらったのだったか。
その他「江戸役者異聞」(河出文庫)などいわゆる「江戸もの」は素材選びからして面白い一方で、現代ものは独特な精神世界(1年おきに入院していたとか)で難解ではあるものの、引き込まれる(読ませる)力は十分。
こちらの世界はハカセに解説してもらわないと理解しがたい不可解なところがあるけど、その不可解さもスリリングでもあって楽しめる。
自家にあるのは『ウィスキーボンボン』『手紙』などで未読のものもあって、読むのが楽しみ。
現代ものながら分かりやすくてオモシロいのは「デンデラ野」(新潮文庫に同名の短編集あり)かな、意味するところは姥捨て山のことで映画化されてもいる(見てない)。
ともあれ江戸・現代、2つの世界とも十分楽しめるからおススメです。