美術の話題なのでハマスホイと一緒にとも考えたけど、展覧会とテレビ番組の違いもあるし、長くなりそうだから別だてネ。放送大学の歴史上最高の講義だと思っている「日本美術史の近代とその外部」は、この1週間ほど昼の12時から2コマずつ放映していたので録画を勧めようとしているうちに、今日が最終回となってしまった。第3回がマネの回で、森村泰昌が「オランピア」の裸女と召使の黒人女の2人に成りすました作品について、森村自身と稲賀繁美講師が実に深い議論を取り交わしていたのだけれど、森村泰昌の著書を持っているというカヨちゃんに、前もって情報を伝えて上げられなかったのが残念かつ申し訳なかったヨ。テキストには2人の対談まで活字化されているとも思えないので、再放送を期待してもらうほかない。
今日の第14回ではほとんど知られていない、エル・アナツイというアフリカのアーティストを取り上げていた。この回を見るのは3度目くらいながら、関心が無いので聞き流していたものをマジメに見たら、これも実に深い講義だったので驚いたナ。廃材を集めて様々なインスタレーションを創造する作家なので、朝日の美術時評などで見かけた記憶がある気もするけれど、稲賀さんが解説してくれているような《読み方》(鑑賞の仕方)など思いもよらなかったので衝撃的だったネ。
稲賀さん(国際日本文化研究センター副所長・教授)と比べると、専門が近い青山昌文(放送大専任)のレベルのあまりの低さが際立ってくるので、ますます青山の番組を見る気がしなくなるヨ。青山の講義が代替可能な通り一遍の講義でしかなく、オリジナルな切れ味など切れ端も感じないけれど、稲賀さんの講義は毎回紹介される対談相手の専門家さえ驚きを示すほどの独自な解釈を提起するので、ワクワクするほどの楽しさなンだネ。
昔は放送大学で日本美術史の番組を佐藤さんという東大教授が担当していたけれど、佐藤氏は青山ほどバカではないながら講義はやはり代替可能な通り一遍のものだったので、この講義の再放送が放映されなくなった理由は稲賀さんの講義にあったわけだネ。美術の東大教授と言えば、世界でも評価されている高階秀爾さんが有名だけれど、現代美術については稲賀さんのようなヴィヴィッドな解釈を読んだことはない。現代美術に限らず、先ほどのマネを始めとする近代美術に関しても、高階さんよりも稲賀さんの解釈・解説を聴きたくなるほどだネ。今日の講義でも、布や金属の廃材を利用したエル・アナツイの美術を説明しながらも、ボッティチェルリの「ヴィーナスとマルス」という絵画の分析にまで及んだので腰が抜けるほどビックリしたヨ。確かに美神・ヴィーナスは布の、戦争の神・マルスは金属の表象だものネ、とにかくスゴイ人だ!