【読む】生方智子  中山和子

 生方智子精神分析以前』を読み始めたヨ、第9章の志賀直哉「濁った頭」論ネ。フツーの論かと思っていたら、最終章の「4」からにわかに面白くなって男=神経衰弱(対)女=ヒステリーという二項対立という把握には感心したネ。想定どおりジェンダー論の研究者だと思ったけど、後書きを読んだら明治大学修士課程院生の頃に指導教授の中山和子先生から、「あなたは男性の言葉を獲得しようとしている」と言われた言葉が衝撃となったのが出発点だという。

 多くの女性研究者とは異なりあまりヒステリックにジェンダー論を叫ぶ先生ではなかったけど、教育の場では意外に厳しい方だったのだネ。退職後も長野の山荘から「温かい人柄がにじみつつも鋭い閃きを見せる言葉が綴られた葉書」をいただいているとあったので、個人的にも毎年「温かい人柄」のあふれる賀状をいただいていたことが思い出された。日本近代文学会の編集委員を務めていたので、前委員長だった中山先生との縁が結ばれたお蔭でいただけた賀状だった。

 出たばかりの著作集の平野謙論の巻を頂戴して恐縮至極だったけど、平野の著作を読みながら昭和文学研究に進んだ身としては、その平野謙の教え子である中山先生の平野論をいただいたのも嬉しい縁ということだネ。