『テクスト分析入門』おススメします

松本和也編著の本でひつじ書房から2000円で近刊されたもの。
ひつじ書房といえば中村三春さんの著書を始めイイ本を出している出版社。
本書は松本氏のみならず斎藤理生や友田義行等々、今が旬(しゅん)の研究者が揃って手分けして書いているので信頼もできるし面白い。
ただ「入門」とは言いながらもジュネットへの案内が丁寧なところからも分かるように、意欲的な人たちへの「入門」には最適ながら、意欲が無くて楽をしたいだけの学生には難しすぎるからそのつもりで。
ホントに意欲があるならジュネット『物語のディスクール』を手許に置きながら本書を読むと、飛躍的に無知から脱することができることは請け合い。
論じられている「夢十夜」「高瀬舟」「伊豆の踊子」「桜桃」その他の作品全体が巻末に付されている、至れり尽くせりの配慮は便利ではあるけれど、便利さが必ずしもイイこと尽くめではないと愚考する身からすれば、惜しまれる過剰なサービスだと感じた。
この程度の著名な作品はサービスされなくても、常に手許にあるような意欲的読者のための本だと思って欲しい。